中でも『気温』は、選手も解説者もよく口にする。「昨日と比べ、きょうはかなり気温が上がる予報が出ていますから調整が大変…」というアレである。では、気温が上がるとどうなるのだろうか…。ハッキリしているのはタイムが落ちるということだ。以下は極端であるが、ボートレース浜名湖の夏と冬のタイム差の一例である。
【昨日、8月1日の浜名湖6R 気温28度・天候:晴】
勝ちタイムは1分51秒0である。一方…
【今年1月21日の浜名湖12R 気温10度・天候:晴】
むろん、タイムはレース展開に左右されるため一方的に決めつけられないが、この傾向は全国どこにいっても変わらない。『冬は出て、夏は出ない』のがモーターやエンジンなのである。では、なぜそうなるのだろうか…。
その原理となるのが『シャルルの法則』である。『圧力一定のもとで、一定物質量の気体の体積Vは絶対温度Tに比例する』という物理の原理だ。…正直ちょっと理解できないこれを小学生でも(いやいや筆者でも)分かるようにいえば、『空気は温められると膨張する。膨張するとその分、空気は薄くなる』という法則と言い換えることができる。夏は膨張するので空気が薄くなるのだ。ボートレースでは『水冷式縦型直列2気筒2サイクル、排気量396.9ccのガソリンエンジン』を使っているが、その396.9ccの燃焼室(シリンダ)に入ってくる空気(燃料との混合気)は夏場、容量は同じでも薄いのである。
薄い空気と濃い空気を比べれば、濃い空気の方が勢いよく燃えるのは当然の理である。学生時代、『数学とか理科とか、そんなこと勉強して何になるの?!』と感じていた向きも多いだろう。が、どうしてどうして、こんな身近に活用の場があるではないか。
『役に立たない』と軽々に口走るのはやめにしたい。
「台風が来ると海が盛り上がる。高潮は怖い…」。昭和34年9月26日、超大型の台風15号・伊勢湾台風は東海地方を中心に甚大な被害をもたらした。
記録によると、犠牲者は5,098人、負傷者は38,921人にものぼる。
とりわけ伊勢湾岸で発生した高潮は数々の堤防を決壊させ町を水没させてしまった。猛烈な雨風をともなった超大型の伊勢湾台風だったが、台風史上最大の被害をもたらした一番の原因は『高潮』だった。
満潮時から外れていたにもかかわらず、名古屋港では海水位が平均海面上プラス3.89mに達している。
その要因はふたつ。ひとつは、風による『吹き寄せ』。強い風が伊勢湾の奥に向かって吹き続けたことで波が吹き寄せたのだ。
水深が浅ければ浅いほど強く作用するという『吹き寄せ』は、琵琶湖よりもずっと浅い伊勢湾で威力を増してしまった。そして、もうひとつが『吸い上げ』である。漁師の「海が盛り上がる」原理だ。
ニュースで再三取り上げられるように、台風の時は気圧が低い。
つまり、高気圧地点は空気の層が厚く密度があり、低気圧地点は反対となるのだ。気圧の差の分、低いところは吸い上げられたように盛り上がってくるという原理だ。漁師はこれを経験則で知っている。
研究者に直接聞くと、理論上は気圧が1ヘクトパスカル下がると1cmほど海面が上がるという。空気の力は想像以上に大きいのだ。さて、何が言いたいかであるが…、気圧が下がると空気が薄くなる。薄い空気と濃い空気のどちらが勢いよく燃焼するか考えれば分かるだろう。
『気圧が低いとモーターやエンジンが出ない』理由である。これから台風の襲来が心配な季節に入る。強い雨風だけでなく『高潮』にも十分警戒したい。
ピットからのリポートでよく聞く話だ。
昨日は『気圧』、一昨日は『気温』、きょうは『湿度』である。
この「湿度57%」とは何を指しているのだろうか。『湿度』とは空気の湿り気を数値化したものだが、パーセンテージで表すのは『その温度の空気が含み得る最大限の水蒸気(気体化した水)の量=飽和水蒸気量=を100』としているからだ。(図上)
これを相対湿度といい、中学校の理科に次のような表が出てくる。温度が高い方が多くの水蒸気を含むことができる
「気温30℃湿度57%」はこうなる。30.4×0.57=17.328。1立方メートルあたり約17.3グラムの水が水蒸気となって混ざっているということだ。湿り気の多い空気よりも乾いた空気の方が燃えやすいことを念頭に参考とするデータの前提である。
ところでお気づきだろうか。上記表のマジックである。
もし、昼と夜の水蒸気の絶対量が変わらず気温だけ変化したとすると、気温20℃の場合湿度は100%になってしまうのだ。(図の赤い矢印)
「日中30℃まで気温が上がったんですが、日没とともに急に冷え込んできました。現在気温は20℃、湿度は100%です」というリポートになる。
気温は低い方がモーターは出るが、湿度が高いと出力は下がる。
「夜になっても思ったほど回転が上がらない…」と選手がしばしば口にする要因のひとつである。
選手コメントやピットリポートは注意深くチェックしたい。
湿度100%、つまりこれ以上空気中に水蒸気は含めない飽和状態の空気が冷たい窓ガラスやコップに接すると、空気中の水蒸気は水蒸気のままではいられず水滴となる。これが『結露』である。夏休み中の小学生に教えてあげると、オッズ…じゃない、株が上がるかもしれない。
公営動物園の飼育員からこんな話を聞き、「ワラルーですか?!」と思わず聞き返してしまった。飼育員の解説はこうである。
「カンガルーとワラビーとワラルーは同じ有袋類の仲間で、大きさによって呼び方が変わるんです」。
つまり、『カンガルー』という名称はワラルーやワラビーを含めた総称として使う場合もあるということ。むしろ、そうしている大人の方が多いかもしれない。使い分けていたとしてもワラビーとカンガルーである。自動車を引き合いに出すと、こうなる。
一般的に自動車というと、セダンやハッチバックなどの乗用車をイメージする向きが多いだろう。
一方、自動車を『大きい・小さい・普通』で分ける方法もある。この場合、『種』は問わない。
通称『カンガルー』と一緒である。
というのが一般的だそうだ。ただ、そこには法律や絶対な学術根拠はない。
人それぞれそれ自由に想定しているボートレース界の区分も同様かもしれない。
『若手とベテラン』『差し屋とまくり屋』『スタートが速い者と遅い者』『強い選手と弱い選手』『出ているモーターと出ていないモーター』などである。
大事なことは、観念から脱落している部分があるかもしれないということだ。ワラルーのように…。
中間的位置にいるため目立たないだけの存在を見落としてはならない。
諸説あるが、『跳ぶもの』という言葉を語源とする『カンガルー』。ワラルーは岩場で生活するタイプが多く、太い足をもつなど身体つきが頑丈。中型ながら屈強なのである。
A2やB1選手に『よく跳ぶ』ワラルー的存在を見いだせたらこれほど面白いことはないだろう。