ボートレースには専門用語があります。選手のインタビューや、解説ページで良くでてきますが、理解すると尚更、予想やレースが楽しくなります、簡単ですので是非お読み下さい。
行き足
どの世界にも独特な用語がある。ボートレースも同様だ。
例えば『行き足』。日常生活の中で聞いたことがないが、ボートレーサーは『行き足がいいのでスタートがしやすい』とか『行き足がいい分、接戦で強い』などと話す。
『行き足』とは何だろうか…。
単純化すると、『行き足』=『加速力』である。
それも、最もスピードが乗っていく部分を指す。
100メートル競走で考えてみよう。
『オン・ユアマーク・セット・バン!』(位置について、よ〜い・ドン!)選手はスタートを切る。
クラウチングスタイルからスタートダッシュしていくが、ここが『出足』。研究によるとスタートして10メートル強がこれにあたる。概ね10歩目くらいまでだ。
さらに、身体を起こしながらストライドを伸ばし加速していく。ここが『行き足』である。選手によって異なるが、10歩目から24歩目くらいの間で最高速度に達するという。『加速のアンコ(真ん中)』の部分である。速い選手はここで抜け出してくる。見ていて最も力が入るところである。
多くのボートレーサーがこの部分を重要視している。すなわち『行き足』である。
そして、ゴールまでスピードを維持するのが『伸び』。
『伸び』と言われる部分は、加速というよりも『維持』『持続』である。他が減速傾向になりやすい箇所でスピードを維持できたら、伸びていくように見えるものだ。
それぞれの競技体験と照らし合わせることができたら、さらに面白くなる。
ボートレースの競技性は知れば知るほど奥が深い。
定時時点
つまり、『判断のものさし』を具体的に教えている指導者ばかりではないと見受けられるのだ。(違いますか?) 上記のような場合、高校野球では『ランナーが3塁ベースを踏む瞬間と外野が捕球する瞬間が同時』であれば『ゴー』が基本。あとは、ランナーの足の速さやスピードの乗り、さらには野手の守備位置や肩の強さ、打球の速さを総合的に判断する。極めて短い時間の中での決断である。ケースごとに対応は異なるだろうが、まずは『基準』を会得することが肝要。基本があるからこその応用である。 それこそが『定時定点』の概念なのだが、野球界ではあまり使わない。
使うのはボートレース界である。
「フライングを切らないよう、定時定点をしっかり確認していいスタートを切りたい」と選手は言う。あくまでも説明用として数字を丸めるとこうなる。ターンマーク横、スリットラインまで150メートルの助走距離がある場合、残り9秒で加速を開始するのが基本。ダッシュ戦の200メートル起こしでは概ね12秒だ。(選手取材による)そして、スピードを乗せていく。
ボートは概ね時速80キロ。1秒間に約22m進むので、加速がかなり進んでいる40メートルとか45メートル地点は残り2秒が基本。あとは空中線や距離看板との位置関係を確認しながらスリットラインに飛び込んでいくのだ。行き足がいい時とは、ランナーが俊足の場合を指すだろうし、水上の流れる風の向きや強弱は打球の勢いや野手の肩などに相当する。これらをもとにした一瞬の判断が成否を分けるのである。 スタートを野球になぞらえると、選手とベースコーチと監督を同時にやっているようなものであることが分かる。
マイすぎ
『マイずき』ではない。『マイすぎ』である。
ボートレース用語に『マイ』はたびたび登場する。『ツケマイ』を筆頭に『イン先マイ』『マイ足』『マイしろ』、そして『マイすぎ』などである。
『マイ』とは『マワル』の変化形。
『ツケマイ』は、内側艇にぴったりツケて外から外にマワル戦法(まくりの一種)を指す。
『イン先マイ』は1コースから他艇よりも先にマワル(ターンする)こと。
『マイ足』は旋回するときの舟足。
『マイしろ』はマワルときの内側の旋回スペースを意味する。ちなみに、『のりしろ』とか『綴じしろ』というが、この『しろ』とは『余白』のこと。この余分な部分があるからこそものごとが完成する。今の世の中は、『効率』ばかりで『余白』が小さくなり過ぎていないだろうか。…『余談』である。
そして、『マイすぎ』…。
この場合の『マイ』は旋回やターンの意ではない。プロペラがマワルことをいう。
つまり、『マイすぎ』はプロペラがグルグル回り過ぎている状態。例えば、下り坂なのに自転車のギアを軽くし過ぎ、ペダルを踏んでも意味がないくらい空転しているような状態をいう。
『うりきれる』とはその極限状態を指すボートレーサー用語だ。
反対に『とめすぎ』は、上り坂なのに重たいギアにしているため、思うように登坂できず自転車から降りなければならなくなるような感じと解釈していい。
いずれにしても、何ごとにも『ちょうどよさ』が必要。過ぎたるは及ばざるがごとしなのである。
中堅上位
『成績どう?』『うん、中の上かな』…これは一般的に聞く話だ。
一方、『調子はどう?』『まあ、中堅上位ですね』…は一般的ではない。ボートレーサー用語である。
スポーツ界で『中堅上位』という言葉が一般化されている種目は他にあるだろうか。
投手のレベルについて捕手が『中堅上位ですね』と言ったり、Jリーグの解説者がチーム力分析で『中堅上位』と言うのを聞いたことがない。
果たして『中堅上位』とはどんな状態だろうか、考えてみたい。
そのためにはまず『中堅』を知る必要がある。
モーター気配について、選手から『中堅』とか『普通』と言われると取材者は「聞き出せていない。もっと聞き込まなければ…」と感じる。(複数の取材者から聞いた話だ)
戦う武器や特徴がないと思い込むのだろう。強い感じがしない。
が、ここに言葉のマジックがある。
『中堅』『普通』とは、レーサーの技量やコース特性などを最低限発揮できる基本的な水準をいう。弱いわけではない。
レーステクニックで秀でている選手はそれで勝負できるし、インに入れば50%以上の標準確率で逃げるということだ。『中堅』や『普通』を過小評価すると痛い目にあう。
と考えると…
『中堅上位』とは、モーター力が技量やコース特性を補って余りある状態を指すことになる。
接戦になれば有利だし、多少のミスはカバーしてくれる。
参戦メンバー全員が普通の状態として予想した着順のひとつ上があると考えてもいいのだ。
『上位』ともなればなおのことである。
昔の言い方になるが、通信簿『4』が『中堅上位』。結構優秀である。 ただ…、中には『上位』なのに、謙遜して『中堅上位』という優等生がいるのはボートレース界に留まらない。ご留意を。
得点率
世の中には『それはそういうもの』として覚えておくしかない言葉がある。
例えば、サッカーの『勝ち点』。
6試合を消化して5勝1分けとしている川崎フロンターレが勝ち点16で首位に立っている。
Jリーグは『勝利=3』『引き分け=1』『敗戦=0』を勝ち点としてルール化しており、その勝ち点で順位を競う。川崎フロンターレの場合、5勝1分けなので『3×5+1×1=16』となる。
ただ、サッカーをほとんど見ない年配者から「勝ってもないのに、なんで勝ち点というんだ!?」と詰問されたときには参った。「そういうもんです」というと「どうして」「どうして」と5歳児のように問われ、納得してもらえなかったからだ。これは『そういうもの』なのである。
ボートレースにもある。『得点率』である。
『率』を辞書で引くと『割合・比率・歩合』と出てくる。ほぼ誰でも知っていそうな『打率』はパーセンテージの考え方で表記される。現在のプロ野球首位打者は4割1分0厘の堂林(セリーグ)と3割5分6厘の柳田(パリーグ)である。
ゆえに『得点率』と初めて聞くと、戸惑ってしまう。『パーセントではないのか…』と。
『得点率』とは、以下を基本とした『得点の平均値』を指す。
予選競走を6回走って全着順を取ったとすると、得点の合計は31点。これを6で割ると約5.17となる。ちなみに、得点率5.17では準優勝戦に進むことはまずありえない。経験値であるが、5.83くらいが多い。
なお、得点には、シリーズの有力選手同士で戦うドリーム戦などに付与される『点増し』があるが、上記が基本である(減点も各種設定されている)。
と、ここまで書いてきて、気がついたことがある。『率』の不思議は野球界にもあった。
『防御率』である。現在、セリーグは平良の1.45、パリーグは東浜の1.91がトップだ。
投手が1試合、つまり9イニング投げた場合の換算自責点を『防御率』といい、式は『自責点×9÷実際の投球イニング』で算出される。平良の場合、1試合完投したとしたら、1.45点しか取られないという計算になる。
それも、自責点だけが対象。自責点を語りだすと終わらないのでここまでにするが、結構、複雑で条件もついており、難解である。
そう考えると、『得点率』の方がシンプルで覚えやすい。
勝率
昨日は『得点率』。きょうは『勝率』である。
『得点率』は、ひとつのシリーズの中で完結する得点の平均値。次のシリーズに持ち越したりすることはできないし、『点増し』具合も個々に違う。大会内で優劣を決めるために設けられた点数化の仕組みである。その基本はこうなっている。(以下の他に、減点の規定もある)
一方『勝率』は、ある一定期間の連続した成績を数値化したもので、代表は期間勝率である。例えば、いま出走表に表記されている選手勝率は『2020年後期』のもの。今年7月から12月まではこの値が選手のランク分けに適用される。一部学校で採られている成績順によるクラス分けを例に引くと…
『テスト』
↓
『採点・集計』
↓
『審査・クラス分け案』
↓
『周知』
↓
『クラス分けの実行』となる。
つまり、『テスト』から『クラス分けの実行』まではタイムラグがあるのだ。
ボートレース界のランク分け(A1・A2・B1・B2)も同様。集計から実行まで2カ月を要する。ちなみに、ボートレース界は3学期制ではない。半年単位の2学期制だ
で…、こうなる。
『2019年11月〜2020年4月までの成績を集計』
↓
『審査・異議受け付け・クラス分け案』
↓
『周知』
↓
『2020年7月から適用して実行』
なお、ボートレースオフィシャルwebでは、勝率のことを『着順点の合計を出走回数で割ったもの。一般競走の着順点は1着が10点、2着が8点、以下6、4、2、1点。勝率の数字は大きいほど成績の良いレーサー。SG競走は各2点増し、G1、G2競走は各1点増し』等と解説している。
その結果が級別となって選手の優劣を表す。
A1級=20%、A2級=20%、B1級=50%、B2級=それ以外のレーサーとして位置づけられる。つまり予想行為の参考になるのだが、気になる選手のごくごく最近の勢いを知りたいときは、『近況勝率』なるデータが発表になっているケースもある。参考になれば幸いだ。
返還
『ボートレースには、他の公営競技にはない返還の制度がある』。一般的にそう説明されている。特殊な制度だと…。しかし、果たして特殊なのだろうか。『返還』について考えてみたい。
以下の一文はJR東日本の公式ホームページの記載(そのまま)である。
『特急・急行列車が、到着時刻より2時間以上遅れた場合は、特急・急行料金の全額をお返しします』。
列車が動かなかった場合はもちろん、2時間以上遅れると『本来の役割を果たせなかった』として特急・急行料金が払い戻されるのだ。『返還』である。
ボートレースにおける『返還』も、これになぞらえることができる。
例えば、1日2走の選手が前のレースで負傷し次に出られないのは、列車が動かないのと同じ。チケットは売ってしまっているが、役割が果たせないので『返還』する。
フライングや出遅れは、規定時間帯内に運行できなかった『2時間以上の遅れ』のケースに似ている。特に、大時計がゼロを知らせてから1秒以上遅れる出遅れは分かりやすい。
ボートは最高速で1秒間に約22メートル進む。スタートの瞬間、他艇がはるか前方にいるようでは競走にならない。『競う』という役割を果たせないほどの遅延である。すなわち『返還』の理由となる。
一方、フライングについて日本陸上競技連盟の公式サイトでは以下のように明記(そのまま)している。
『国際陸連(IAAF)は、2010年から不正スタート(通称:フライング)のルールを改正しました。IAAFの主催大会では、混成競技以外のトラック種目では、1回目のフライングで失格となります。日本選手権でもこのルールが適用されます』。
陸上競技では『スタート・インフォメーション・システム』を利用し、スターティングブロックに内蔵された感知システムによって合図の瞬間から0.1秒未満に動きだすと『不正スタート』(日本陸上競技連盟が使用している言葉です)と判定している。
合図を聞く→神経経路を伝って脳に伝達される→脳が指示する→体が動きだす…という一連の流れに、最低でも0.1秒はかかるということだ。科学的で厳格である。合図と同時スタートは不正、1回でアウトなのだ。
そして、ボートレースはずっと以前からフライングにとても厳しく対処している。
当然、レースのやり直しはできない。一回でアウト。その選手は欠場扱いとなる。欠場であるから、『本来売ってはならない舟券を売ってしまった』ことになる。あるべきカタチに戻さねばならない。
『返還』の考え方は、商行為や各種競技の中にも理念として存在する。そういう理念に真摯に向き合ってきたルールが『ボートレースの返還』といえる。
ケブラー
『ケブラー』という言葉を聞くことがある。『ケブラー繊維でできており切れにくい』とか『いざという時のために…』などの声だ。ボートレース界でもズボンや手袋、勝負服の裏地などに使用され、選手の身を護っている生地だ。
『ケブラー』は本来『KEVLAR』と書く。
アメリカのデュポン社によって1965年に開発された特殊な繊維で、強度や耐熱性・耐切創性に優れている人工繊維は1970年代から商業利用されており、日本では1989年に『デュポン・東レ・ケブラー株式会社』が設立されている。実際に国内で広く使われるようになるまでには、さらに多くの時間を費やしてきた経緯がある。
現在、『ケブラー繊維』を国内で製造している東レ・デュポン株式会社によると、その特性や用途はこう紹介されている。
1. 高強度…同じ重さの鋼鉄の約5倍の引張強度があるため、製品の軽量化や小型化が可能。
2. 耐切創性…刃物などによる切創に耐えるため、防護服などに使用される。
実際、ケブラーズボンをハサミで切ろうとしてもなかなか切れない。ハサミが使いものにならなくなるほどだ。(筆者取材)
そのほかにも、耐熱性・耐摩耗性・耐衝撃性・電気絶縁性に優れ、衣服だけでなくクルマのタイヤやブレーキパッド・建築素材の補強・耐震補強シートなどに活用されている。
『最強の繊維』と言っても過言ではない。
消防士やレスキュー隊員なども身にまとう特殊繊維によって護られているボートレーサー。しかし、万能ではない。ボートレーサーは日々、高い緊張感のなか競走している。
回転域
『回転域が合っていないので調整したい』。取材でよく聞く話だ。
この『回転域』を理解するには相当な知識が必要であり簡単ではないが、単純化して理解する方法がある。『回転は直線的に上がらない』という原理を知ることだ。
空回転していないことが前提になるが、比例グラフのように直線的に回転が上がる場合、『回転域』は関係ない。実際は曲線を描くので回転の上がり方の調整が必要となるのだ。
『回転の上がり』を『パワーや加速』にいかに結びつけていくか…はボートレーサーに限らずモータースポーツのメカニックやレーサーが腐心する重要問題である。
その『回転域』とは、モーターやエンジンの回転が勢いよく上がりつつ、パワーや加速が爆発するタイミングをいう。これが合致しない場合、『回転域が合っていない』となる。回転さえ上がれば加速するというわけではないところに難しさがある。
自転車を考えればいい。どんなにペダルをクルクル回しても負荷がかからないくらい軽ければ推進しない。
おまけに、回転が上がってからパワーやスピードが出てくるまでタイムラグがあるのだ。
あくまでも比喩的に表記しているが、図上の黒い線は『出足型』、赤い線は『伸び型』である。黒い線の場合、回転のピークを打ったあと、やや回転が下がってくるので『かましても伸びない』。
赤い線の場合は、最高速になるまで助走が必要であるためダッシュ向きとなる。また、いったんレバーを放ると回転がなかなか上がってこないため、レース道中、握って旋回することが多くなるのだ。
モーター調整は奥が深い。
そして、レーサーがメカニックをも担当するのがボートレースの特徴なのだ。
位置取り
『位置取り』の話である。花見ではない。
『やあ、いい位置取りしていましたからねぇ…』などとレースリプレイで解説者が言う接戦時のアレである。
選手からは、「全員が横並びだとある程度作戦が限定されるんですが、1周目のバックストレッチのように微妙にバラついた接戦状態になると、考えなきゃいけないことがいろいろあって難しくなります」という声がよく聞かれる。内側にいて先行艇に届きそうなケースや3艇以上のラップ状態を指しているが、互いに勝ちたいのだから作戦が交錯するのは言うまでもない。
その成否のカギとなるのが『直線の位置取り』である。
ベテランが「次の次を想定した」としばしば語るが、それは野球の配球のようで面白い。取材経験を総合すると以下のようなことが要素となる。
1.自分の持ち味を生かす…全速外マイが得意とか差しに自信ありなど、個性を発揮するための位置取り
2.相手の弱点や意表を突く…相手の心理面や技術面のウイークポイントを利用する位置取り
3.自分が苦しくとも相手の動きを制限する…相手を自由にさせない位置取り
4.最終形から逆算する…最終的なカタチをつくるため、今どうしたらいいかを考えた位置取り
5.意思決定する…現状の着順を守るか、上位着を取りにいくか方針を明確にした位置取り
6.状況や確率を見失わない…得点状況など今自分がどこに置かれているか、確率はどうか考えた位置取り
など多岐にわたる。
これらを舟券作戦にあてはめることができないか試みたが、あてはまるものとそうでないものとがあるような気がする。いかがだろうか…。
倍返し
いま『倍返し』が流行している。半沢直樹のあの名台詞である。
いつの時代もどの世界においても権威におもねる者は存在する。虎の威を借り、わがもの顔で周囲を屈服させる権力寄りほどかっこ悪いモノはない。そこに『感謝』や『伴走』の精神がないからだ。権威に頼らず普通に生きる人々の心の中にある『意趣返し』の気持ちが半沢直樹という架空の人物に集約されている。
しかし、ボートレースにおける『倍返し』は架空の話ではない。よくあることだ。
写真下は、きょう31日最終日を迎えるボートレース下関『九州スポーツ杯争奪戦』の、昨日(終わったレース)のオッズの一部である。30日11R準優勝戦は、1号艇の興津藍に人気が集中。相手探しの様相を呈した。
3連単の人気オッズ(10倍以下)は最終的に次の通りだった。
124=5.9倍
123=7.0倍
142=7.3倍
134=8.0倍
143=8.9倍
舟券作戦に正解はない。
『10倍を切るのは買わない』とか『本命は買っても2点まで』『当たって倍になればいい』など、個々の流儀は納得度の問題にほかならない。
この11Rは、結果134で3連単は8倍ちょうどだった。124・123・142・134の4点を均等に購入していれば『倍返し』である。本命筋ゆえ当然だが、こういうケースはとても多い。
一方、1号艇の興津をアタマに、連下に有力候補3人を絡めたフォーメーション『1-234-234』を購入した場合はどうだろう。6点で800円だからあまりうまみはない。ましてや1番人気の124がきたら6点で590円。『意味がない』と考える向きもあるだろう。
しかし、どんな場合でも舟券に正解はない。『元返しOK』(関東では『元取り』)と考えるファンがいることも事実。『次に勝負が持ち越せるのだから御の字…』ということである。ひとつの見識だ。
一方、どうせなら舟券でも実生活・実社会でも『百倍返しだ!』と考えている向きがいるのも現実。これも見識であり否定する理由はどこにもない。
レバー
『レバー』とはクルマのアクセル。左手で操作するためボートレースでは『レバー』というが、クルマのアクセルと決定的に違うことがある。『方向舵』の役割を果たしている点だ。
クルマはタイヤの回転数で速度調節し、ブレーキもかける。『方向舵』はタイヤの向きだ。ドリフト走行は別であるが、基本的にタイヤはクルマが行きたい方向を向いている。(下図赤い部分がタイヤ)
一方、ボートレースの場合はプロペラの回転で速度調節する。ブレーキがないため完全に停止することはできないが、水の抵抗で減速することになる。『方向舵』はモーターの向きだ。ここが決定的に違う。
モーターは目標物(ターンマーク)から遠ざかろうとしているのだ。
『そんなバカな…』。と思われるだろうが事実である。下の写真の通り旋回時、モーターは外を向いている。
原理はこうだ。
ボートの最後尾に取り付けられているモーター自体はまっすぐにしか進めない。(図上のグレーの矢印)
しかし、ボートを旋回させなければならない。
そこで、ハンドルでモーターの向きを変え外に進むようにする。(図上の青い矢印)
すると、ボートの前方に比べ後方が急激に押し出されることになり向きが変わるのだ。
小型船舶操縦免許取得研修ではこれを『キック』と教えている。ボートの最後尾を『蹴りだす』イメージである。
『ボートが惰性によって進もうとする方向性や力』と『モーターの力が直接かかるボート最後尾の向きや推進力』の合力によってモーターボートは操られている。そのメカニズムの核となるのがレバー操作。どれだけのパワーでボートを『キック』させるか、それによってターンは違ってくる。
峰竜太が到達せんと研究している境地は、その限界に他ならない。
ちなみに、トップ画面の『グー』と『パー』はベテラン選手がしばしば使う言葉だ。『グー』はレバーを握りっぱなし、『パー』は完全に放ってしまったことを指している。