美女ボートレーサー、大山千広インタビュー前編…SG制覇を夢見る24歳の思い
大山千広。24歳。ボートレース界のニューヒロインだ。2019年シーズンは5600万円以上を稼ぎ出し、見事に賞金女王の座に輝いた。キュートな実力派として今、俄かに注目を浴びる大山は、3月3日から始まる第4回レディスオールスター(鳴門)に出場する。ファン投票による得票数では、次位の選手に1万票差をつける2万6737票という断トツの支持を集めた。女子としては初めて、ボートレース界で最もグレードの高いSG制覇を目指す大山の魅力に「THE ANSWER」が迫った。前後編でお届けする。
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賞金女王を獲得した実績に加え、愛くるしい笑顔も相まって一躍ブレイクを果たした大山。急激な環境の変化にも自分を見失うことない。4年目での女王戴冠にもあっけらかんと話す。
「たまたまなれただけです。2、3回とって本物、みんなに認められるんじゃないかと思ってます」
キュートに笑う姿はどこまでも自然体だ。だが、ニューヒロインの誕生を周囲は放っておかない。スポーツメディアだけではなく、ファッション誌や、テレビの密着取材も受けるように。そんな現状には戸惑いを覚えているのも事実。
「注目されているんだっていう実感はありますけど、不思議な感じがしています。少しずつ慣れてはきていますが、もともとそういうつもりで選手になったつもりではなかったんで……。こんなに取り上げてもらえるなんてびっくりですし、私なんかでいいのかなって。戸惑いのほうが大きいです」。さらに注目されることは「あまり好きじゃないんです」ともいう。
大山が目指す場所――。それは男子に勝つことだという。ボートレースの魅力を問うと、間髪入れずにこう返ってきた。
「女性と男性が一緒にレースをするんですけど、その中で女性が男性に勝てる数少ない競技。それが一番の魅力です。どうしても男性に比べると、女性のほうが劣ってしまうところが多いのは事実。本当に超えられない壁はあります。ボートに乗る技術の差だったり、動体視力、筋力、反射神経……そういった部分は劣ってしまう。体重というハンデはありますが、それでも厳しい部分は大きいですね」
ボートレースは男女が同じ土俵で勝負する、数少ない競技の一つ。レーサーの体重がレースの勝敗に大きく影響するため、最低体重制限(男子51kg・女子47kg)が設定されている。レースに勝つためにはより軽い体重でいることが望ましいとされており、その面でのアドバンテージは確かに女性にあるが、それ以外の部分では男子を相手にする苦労を感じているという。
だからこそ、大山は燃えている。
目標は男子を倒してのSG制覇
「それをやれたら本当にかっこいいじゃないですか」
「それを成し遂げた女性がいないので、できることなのかどうかもわからないですけど、それをやれたら本当にかっこいいじゃないですか。夢ですね。ワクワクする気持ちでやっています」大山はボートレースでの最高グレード、SGでの優勝を最大の目標に掲げている。男子選手に勝たなければ到達できない偉業で、過去に成し遂げた女子レーサーはいない。なぜ「打倒・男子」を目指すのだろうか。そこには同じボートレーサーで、2018年に引退した母・博美さんの存在があった。
「もともとは母を見ていてですね。男の人に勝っているのがかっこいいなと。それは昔から思ってたんですけど、真剣に私が男性に勝ちたいと思うようになったのはA級に上がってからですね。せっかく一緒に走れるんだから。これだけ力の差がある中で、勝てたらかっこいいじゃないですか。負けず嫌い……なんですかね。自分のこと負けず嫌いだとは思っていないです。普段は気も強いほうではない。でも、仕事は勝ちたいと思ってやっています」
向上心は強い。昨年8月の真夏の女王決定戦「プレミアムGI第33回レディースチャンピオン」では史上最年少記録となる23歳6か月で優勝。しかし、自身が納得いくレースは1つとしてないという。
「レース1つを振り返っても、ターンマークを6回、3周回る中で、全部うまくいくことってないんです。これは頑張ったなというレースはありますが、後から振り返ると悪いところばかり気になります」
では自身が夢として描く、SG制覇へ向けた課題はどこにあるのか。
「旋回の技術が足りないし、経験も足りていない。SGとかグレードの高いレースを走る経験が圧倒的に足りないです。まずはそういう舞台に出られる権利をつかんでいって、そこからがスタートライン。今やっとスタートラインに立てたところです。その中で上手くなれる。今の私の位置では、まだまだ上手くなるスピードは遅いって思っています」
大山は賞金女王となった今、ようやくスタートラインに立てたばかりだと分析。キュートな視線で冷静に自身の足元を見つめながら、目標へ向かって進んでいく。
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