1馬力ものエンジンを積んだボートを水上で巧みに操り、競い合う・ボートレース。男女混合で行われる試合もあり、そんな中、男性に引けを取らずに鋭く攻めた走りで魅せる女性選手がいる。その名も大山千広。
実力もさることながら、 SG(ボートレース最高峰のクラス)のひとつでファン投票上位者が出場できる「オールスター」へは、ファン投票4位で選ばれるほどの人気ぶり。そんな彼女の強さの秘密を聞いてきた。
■「自分に足りないことが見えた」
インタビューの数日前には『桐生SGチャレンジカップ』に出場していた大山選手。労いの言葉を述べつつ、レースの感想を尋ねる。——3度目のSG挑戦にて初の準優勝戦進出。感慨深かったりしましたか?
大山:やっぱり、いつもテレビで見る人達のレースを自分も走ってる……刺激はもちろんモチベーションもすごく上がりますよね!
SGという舞台を走らせていいただいていることが、今の自分の成長に一番繋がると思ってるので。SGやG1をたくさん経験して、勉強をしたいって思いが大きいです。
———なるほど。そんな舞台、相当プレッシャーもあったのでは?
大山:プレッシャーは意外とないんです(笑)。でも、レベルが違うので、自分に足りないことがすごい見えてきます。ターンの差とかすごい感じました…。
当日は女性選手のみ参加の「レディースカップ」も開催していた。しかし、当時賞金ランキングで女性レーサー1位、全レーサーの中でも上位に食い込んでいた彼女は、男女混合のチャレンジカップで「唯一の女性」としての出場となった。
大山:女子で私だけってことに特別な思いはないですが、男子のほうを経験できるのは大きいですよね、勉強になります!
■きっかけは「母のレース」
先述にもあるが、現在実力と人気を兼ね備えたスター選手となりつつある彼女。そもそもボートレースに挑むきっかけは何だったのだろうか。大山:小さい頃から母のレースをテレビで見ていて、男の人と一緒に走る姿がとてもかっこよくて誇らしかったので「私もそうなりたい!」って思うようになったのがきっかけです。SGを走れているので、その目標に一歩ずつ近づけているのかな?
———元ボートレーサーのお母様(大山博美さん)とは師弟のような関係だったりしますか。
大山:そういうのは全くないですね! 私から話すことはあっても、母から仕事の話をされることはほぼないです。言いたそうにしているのは伝わってくるから、我慢してくれてるのかな(笑)。
ただ、母は30年くらい走っていろいろな経験しているので、失敗したときは「そんなことよくあるよ」ってよく励ましてくれますね。
■ボートレースの魅力は…
———お母様を追って実際にボートレースへ挑戦したわけですが、やはり苦労はありましたか?
大山:難しいというのはやる前から分かっていたけど、今は逆に「こんなに熱中できる競技だったんだ!」って思います! 楽しくて仕方がないので、「本当にいい仕事に就いたな〜」って。でも、お母さんは他の仕事に就いてほしいんだろうなっていうのは、薄々感じてましたね。
勝ち負けの世界にも物怖じせず、心からレースを楽しんでいる彼女。改めてボートレースの魅力を聞くと、女性ならではの答えが。
大山:男の人と女性が対等に戦えるスポーツって他にないと思うので、「男の人に勝てる」っていうのは魅力的だと私は思います。じつは、いまって女性にも人気が出てきているんですよ!
———大山選手がきっかけで、ボートレースに興味を持つ女性も少なくないと思います。ただ、まだボートレースをあまり知らないって人もいるはず。そんな人はまずどこを楽しむと良いでしょうか。
大山:やっぱり、レース場に来て音とかモンキーターン(ボートの上に前傾姿勢で立ち上がってターンする旋回術)とかを聞いたり見てほしいですね。生で感じるとカッコいいと思います!
■男性に勝つための練習
彼女は男性と同じフィールドで戦えるのが魅力と語る。一般的には男性の方がパワフルな走りができるそうだが、実際はどうなのだろうか。大山:そうですね。体重のハンデはあるのですが、「筋力」「体幹」「動体視力」とかは男性に勝てない部分はありますね。そういったものから生まれる技量の差もありそう。でも、どうだろう…女性の選手も男性と同じくらい居たら違うのかな?
———大山千広選手は「男子選手顔負けの全速ハイスピードターンがウリ」と耳にしました。
大山:ウリ…(笑)。でも男子と渡り合うためにはスピードを上げないといけないっていうのはあるので、練習はスピードは意識して行ってます。そんなキツイ練習も、乗るのが楽しいから乗り越えられていると思います!
■勝ち続けられる理由
そんな彼女は、今年の賞金獲得額は5,200万超えと女性レーサーの中でもダントツ。男性を含めても上位であり、いかに実力があるかがうかがえる。
大山:今の自分の実力からしたら出来過ぎかな? って思うくらいです。賞金女王は12月31日までわからないですけど、今年は走る舞台が変わって経験も積めて、結果としては飛躍した年だなと感じてます。
ただ、もっと活躍してSGで優勝が目標なので…「今がすごくいい!」ってわけではないですね(笑)。
———現状に満足していない…すごい(笑) とはいえ、功績は確かなものだと思います。ここまでこれた理由は何でしょうか。
大山:そうですね、メンタルは強い方じゃないし、負けずぎらいなほうでもない…。ただ、抱いている目標に自分を持っていくために努力するようにしています。周りをあんまり気にしないのが、浮き沈みをしないのにも繋がっているのかな。
———話してみて芯がある方あると感じたので、てっきり負けん気が強いのかと…
大山:いえいえいえ! もう、メンタルめちゃくちゃ弱いですし、「ここから逃げたいな」なんて思うことも多々ありますよ! 試合前には未だにすごく緊張してますよ(笑)。
■女性選手間で流行ったモノ
選手としての功績もさることながら、キュートなルックスも注目されることが多い彼女。実際に、「大山千広」と検索すると続く変換に「かわいい」と出てくる。
大山:あ、ありがとうございます…(笑)。でも、仕事場ってジャージ着てお化粧も取れてって感じで、ボロボロなんです。逆にトークショーに出たときは、衣装を着てお化粧させてもらえるので嬉しいですね。
———現場のカメラマンは、試合に臨んでいるときの真剣な表情を撮りたがりますもんね。
大山:私達の気持ちとしては、ちゃんとキメた顔で撮ってほしいですけどね(笑)。
———やはり女性選手も美容への関心が高かったりしますか。
大山:そうですね。女子選手って美容とか好きで、色んなものが流行るんです! このドライヤーがいいよとかこの化粧品がいいよみたいな。
3人部屋だったら、その3人が同じもの持ってるなんてこともあったり(笑)。最近は美顔ローラーが流行ったかな? 減量のために長風呂したりするんですけど、そのときにみんな使ってたりしました。
■インドア派な一面も
———それは意外な話でした。ちなみに大山選手は普段はどのようなキャラクターなのでしょうか。大山:そうですね、インドアなときも多いですね。一日中映画を見たりずっと漫画を読んでいたりするのが好きで…と言っても年に何回かしかないんですけど。普段がアクティブなので、休みの日ぐらいは家でゆっくりしたい。
———試合時の雰囲気などから、勝手にアウトドア派なのかと…。ちなみに、読む漫画というのは『モンキーターン』『競艇少女』(ボートレースの漫画)とかだったり…?
大山:違います違います(笑)。それは3巻くらいまでしか呼んだことないかも…面白いらしいですけど。私は少年漫画が好きで『ワンピース』『進撃の巨人』『七つの大罪』とかジャンプ系を読んでますね。
■「もっとSGで走れる選手に」
男性を含めてもトップクラスに食い込む実力である彼女だが、憧れている選手などははいるのだろうか。
大山:瓜生正義さんは同じグループの先輩なんですけど尊敬しますね。これだけの結果を出し続けているので。あと、師匠ではないですけど、お世話になっているのは川野芽唯さんですね。ずっと面倒見てもらってます。
———瓜生選手がレベル100だとしたら、大山選手は何レベルくらいでしょう。
大山:えぇ! 2くらいじゃないですか?(笑)本当に追いつけることはないんじゃないかな…天才ですし。でも私も瓜生さんの刺激になれるくらいの選手になっていきたいなと思います!
———とはいえ、現在23歳とまだまだ成長が見込める年齢だと思います、今抱いている目標はありますか?
大山:年末には『QUEENS CLIMAX』っていう大きいレースもあって、せっかく1位で行くので優勝したいと思ってます。ただ、それ以上にSGにでての優勝戦に出場したいっていうのがあるので、将来的にはもっとSGで走れる選手になっていきたいと思ってます!
SIRABEE
大山千広選手以外に取材は来ないのかと思ってしまう程に、大山千広選手は取材を受けていますね。ファンにとってはうれしい限りですね。
こういった活動が、昨今のボートレース人気の向上につながっているのでしょう。
あまり有名ではない媒体にも登場していました。筆者が知らなかっただけかもしれませんが・・・
選手のボートレース媒体以外のメディアの露出がもっと増えればもっと盛り上がっていくと思われます。