12R優勝戦
①上田龍星(大阪・117期)
②磯部 誠(愛知・105期)
③木下翔太(大阪・108期)
④関 浩哉(群馬・115期)
⑤春園功太(三重・113期)
⑥井上一輝(大阪・114期)
優勝戦出場者インタビュー
準優勝戦レースダイジェスト
結果的にすべてインコース1着=大本命サイドの準優が終わって、びわこヤングダービーのファイナル6PITが確定しました! ポールポジションの1号艇は117期の上田龍星。明日も逃げきれば、GI初制覇にして第7代ヤングダービー王の称号を手中にします。この本命に立ち向かうはドリーム組の磯部と木下に2年前の覇者・関、さらには不気味な穴パワーを秘める春園と井上。若武者たちの祭典に相応しい、スリットから火花散る激闘に期待しましょう!
準優勝戦日のピット情報コラム
ファンファーレが鳴るや、12R登場の上田龍星を含む大阪支部がずらり、水面際に陣取った。注視するのはもちろん1号艇と3号艇。木下翔太と井上一輝だ。
スリットに差し掛かり、まずは「うがっ!」と軽く悲鳴があがる。実は木下のスタートタイミングはコンマ02。選手たちにもかなり早いスタートと見えていたのだろう。それでも、入っていると確信したのか、1マーク手前では熱い視線で対岸のビジョンに見入る。
「よっしゃっ!」
1マークを回ると、今度は歓声だ。まず、木下が問題なく逃げ切ったように見えた。さらに井上がまくって攻めていき、これが2コースの中村晃朋を超えて木下に並びかけるように見えていた。これは、大阪ワンツー!
周回を重ねるたび、木下-井上のライン決着は確実なものになっていく。3周2マークではついに、大阪勢は木下と井上にバンザイしながら祝福。歓喜に沸き立っていたのであった。12Rを走る上田にとっても、意を強くしてくれるワンツーフィニッシュだっただろう。
ピットに戻り、木下と井上は顔を見合わせて笑顔を交わす。揃って優出を決められて満足そうだ。木下は勝って優出。井上はGⅠ初優出。文句なしの結果であろう。10Rがこのメンバーとなったとき、当然ワンツー決め手のW優出を描いたはずで、ひとまず願望がかなったということになる。
もちろん、優勝戦はワンツー、あるいは12Rの結果次第での上位独占を狙いつつ、それぞれが優勝だけを見据えて戦う。結果的に6号艇となった井上一輝も、「優勝だけを目指す」と力強く語った。木下にとっては、優勝することで賞金ランクのジャンプアップをも意識しているようだ(というより、それを語っているうちに、どんどんとその気になっていったという印象だった)。もちろん理想は大阪ワンツースリー。ただし、先頭に立つのは自分と意識して明日はピットインする。
11R 日頃の行ない?
磯部誠にとっては、薄氷の勝利と言うしかない。1マークでは関浩哉のジカツケマイを浴び、さらに出口舞有子に差され、さらに最内から大上卓人が伸びてきている。展開によっては、優出を逃していてもおかしくなかった。しかし2マークで出口と大上が競り合うような格好となり、差した磯部が逆転で先頭へ。「大上と出口っちゃんに感謝ですね。欲しいものを聞いておきます」と会見では笑わせている。さらに「追い風の2コースは差しと、関に教えておきます」とも。磯部節全開ではあるが、ピットにあがってきたときには木下と苦笑いを交わしており、肝を冷やす展開であったのは間違いない。まあ、それだけに口もより滑らかになったか。なお、このツキは「日頃の行ないでしょうね」だそうです。悪ガキレーサーの日頃の行ない、ねえ(笑)。
ちなみに、チルト0度で展示タイムを出しているが、磯部いわく「伸びはどちらかというと劣勢です」とのこと。チルトを上げているのは、親分的存在の池田浩二に「びわこではチルト0で行け」とアドバイスを受けたからだそうで、「初めて言うことを聞いてます」。手応えがあるのはターン回りや行き足で、磯部らしいレースができる仕上がりになっているわけだ。
関浩哉も、伸びよりは行き足や出足、ターン回りに自信がある仕上がり。2マークツケマイは、差しに回ったときにハナを切っていた出口が握れば引き波にハマりそうだったからで、さらに磯部がレバーを落とす気配を見切ってもいたからだとか。追い風が強いと流れやすいとインが落とした瞬間にツケマイを放つ、というのは時折見かける奇襲策。それを関も繰り出したというわけだ。それでも結果的には2着であり、そのことには納得できていない様子ではあった。
それにしても出口は惜しかった! バックではたしかに先頭に立っていたのだから、手を伸ばせば届くところに優出はあったのだ。レース後は悔しがるというよりは、全力を尽くしたということか、笑顔が目立ってはいたが、それでもこのレースは間違いなく出口をさらにステップアップさせるだろう。
あと、大上卓人の地力も見落としてはならないだろう。1周2マークでは出口と先頭争い、その後も関との2番手競り、松山将吾との3番手競りと、要所要所で上位争いに顔を出していたのだ。無念の3着も、あと一足あれば結果はどうにでも転がっていたと思われるだけに、その大立ち回りぶりは彼の実力をあらわしているものと言える。というわけで、レース後は出口に頭を下げ、関に頭を下げ、松山に頭を下げ、と挨拶行脚。すべて後輩ではあるが、丁寧に礼を尽くしているのだった。個人的に大拍手を送りたい。
12R 王手
準優ラストカードは①-②の順当決着。まず、2着は羽野直也の猛追をしりぞけた春園功太だ。ヤングダービーは初優出だが、すでに一昨年の若松周年でGⅠ初優出は果たしている。ちなみに1号艇ナシの優出だったのだから、たいしたものだった。だからというわけではないだろうが、優出したことの歓喜や高揚感のようなものは感じられず。飄々と振る舞いながら、戦った選手たちと笑顔で挨拶を交わしているのであった。ちなみに、びわこは「むちゃくちゃ嫌い」とのこと。これもサラリと言ってのけて飄々としているのだが、要するに「ペラもわからないし、わからないことが多い場なんです」とのこと。それでいてやはりサラリと優出を果たしているのだから、優勝戦も飄々と上位をうかがったとしても不思議ではない。
勝ったのは上田龍星。予選トップのプレッシャーに押しつぶされることもなく、コンマ05のトップスタートから堂々と逃げ切った。10Rのときと違って、水面際に浪速応援団はいなかったが、これは1便で帰宿していた選手もいたから。ピットに凱旋した時には、木下や井上が、あ、一輝と忠政の両井上が、ニコニコと嬉しそうに出迎えている。上田も柔らかな表情で先輩の祝福に応えていた。
これで大阪から3騎がファイナルに駒を進めたわけだが、もちろん1号艇の上田が優勝に最も近い位置にいる。優勝に王手をかけたと言ってもいい。3人のなかで最も若い上田が、だ。今日以上の緊張感が襲うことになる明日、その身近な先輩たちが脅威にもなってくるわけだ。
明日の12Rはきっと、ふたたび大阪勢が水面際に集結するはずである。彼らがバンザイしたとき、その先にいるのが白いカポックになるのかどうか。レース前などの様子も含めて、実に楽しみだ。