男女の性別や、年齢、経験に関係ない、水上の格闘技―――ボートレース。その世界で、「艇王」と呼ばれたレジェンドが植木通彦。
公営競技史上初の年間獲得賞金2億円を手にし、記録にも記憶にも残る闘いを続けてきた男は引退後、ボートレーサー育成に尽力し、いまボートレースアンバサダーとして活躍中。
過酷な闘いを駆け抜けてきた52歳は、いまなにを想い、なにを伝え、どう導いていくか―――。植木通彦にいろいろ聞いてみた。
性別 年齢 不問のボートレース界、誰もが1億円選手になれる理由は?
ボートレーサーになるには、福岡県にあるボートレーサー養成所で、1年間、性別や年齢を問わず同じ養成プログラムを体得します。学科も、エンジン整備も、操縦訓練も、スタート練習も、模擬レースも、すべて同じ。
性別や年齢を問わず、養成所で同じスタートを切るからこそ、デビュー後に同じ水上で迫力ある闘いを魅せてくれるんですよね。
いまはボートレースの公式You Tubeに、ボートレーサーのプロフィールや、ライブ配信などが充実していますから、ぜひチェックしてもらって、地元出身のボートレーサーや、闘い方の好きなレーサーなど、みつけて応援してほしいですね。
「まくり差し」などのテクニックが増え、ますます興奮する競技に
ボートレースとそこで戦うボートレーサーがすごいのは、時代の波に対応するという点ですね。ルールが変われば、すばやく受け入れて、すぐに自分に優位になるように対応していく。
その順応性が必要だっていう面は、ボートレースの世界で何年経っても変わらない姿勢ですね。
姿勢といえば、ボートレーサーの操縦する姿勢は、時代時代でどんどん変わります。たとえば正座してターンする時代から、中腰でターンするようになったり、テクニックが増えたりと、技も決まり手も、変わりました。
いまも少しずつ変わってきて、ハイレベルになってきている。むかしは1コースから逃げる、1コースから差す、センターからまくるとか、そういうのがテクニックだった。
いまは、「まくり差し」とか、全速ターンとか……。そういう細かい技に、観客が盛り上がることもありますね。
今後は中継番組などで、初心者には3周という競技のなかに秘められたストーリーや選手の想いを伝えていきたいですね。詳しい人には現代ボートレースをもっと詳しく伝えていきたいです。
男女や年齢に関係ない水上の格闘技、ボートレースの世界で、艇王と呼ばれたレジェンドがいる。
公営競技史上初の年間獲得賞金2億円を手にし、記録にも記憶にも残る闘いを続けてきた男―――植木通彦。
引退後はボートレーサー育成に尽力し、いまボートレースアンバサダーとして活躍する52歳は、なにを想い、なにを伝え、どう生きるか―――植木通彦の“いま”を聞いた。
いまなぜボートレースが注目されているか
まずはボートレースの舞台、全国24か所にあるレース場が、それぞれ大きく変わったことが一番の理由ですね。
舟券を買って水上を駆け抜けるボートレースの現場だけじゃなくて、ファミリーやカップル、友だちや仕事仲間と行けるような空間に変わりました。
たとえば地元グルメが集結したフードコート、ボルダリングが体験できるスポーツ空間、子どもたちが遊べるキッズエリアなどが充実して、ボートレースに興味がない人たちも楽しく過ごせる場になりましたからね。
それからいまはネットを介したオンラインでも楽しめるようになりました。そこも大きいでしょうね。
田中圭ら出演の新CMシリーズ効果、舟券の買い方も観戦スタイルも変わった
それから、田中圭さん、武田玲奈さん、ずん飯尾和樹さん、葉山奨之さんらが出演することしのボートレースCMシリーズも好評です。
意表をつくストーリーや、男女や年齢も関係ないボートレースの世界が描かれて、共感を得ていますよね。
それから、ボートレースにかける金額も昔と大きく変わりました。たとえばSG(最高峰)レースになると舟券を買う金額が3~4万円と大きかったけど、いまは3000~4000円と1/10ほどになって、みんなが参加しやすくなった。
昔はひとりでもくもくとレースに勝負するという雰囲気でしたけど、いまは仲間や友だちといっしょに舟券を買ってレースを予測する、大好きなボートレーサーを応援するというスタイルに変わりました。
ファン層の裾野が広がり、観戦者が増えると、小さな金額でも観戦者が楽しめるし、ボートレース選手たちも賞金の金額は大きくなる。
ボートレーサー志願者も増加、地域といっしょに盛り上がる時代へ
実は、ボートレースファンも増えているうえに「ボートレーサーになりたい!」っていう人たちも増えています。
田中圭さんと武田玲奈さんの水上での闘いのように、男女や年齢が関係ないので、「わたしもボートレースで勝負したい」という気持ちになる人たちが多いんですね。
あと、たとえば家族でボートレース場で観に行ってるうちに、娘さんが「あの選手がかっこいい。あんな選手になりたい!」と感じて、ボートレーサーをめざすという例も少なくありません。
もともとボートレースは、国から認可された地方自治体が主催し開催されている公営競技です。ボートレースの収益は、各自治体のさまざまな事業費にあてられて、地域活性化に役立てられています。
だから、「地域のために貢献したい!」という想いでボートレーサーをめざす人もいるんです。
頂上をめざす選手たちそれぞれのストーリーにも注目してほしい
女性ボートレーサーの活躍もめざましいです。これまでは男性が占めていたSG(最高峰)レースの世界にも、女性が入り込んできました。
条件もルールもいっしょです。彼女たちが描く、頂点への歩み、レーサー人生ストーリーも、いま注目です。そんな彼女たちを「応援したい!」というファンも増えています。