誰よりも輝け!!夏のフィナーレ!!
8/25~8/30にボートレース下関でSGボートレースメモリアルがボートレース下関で開催されます。
情報をどんどんアップしていきますので、皆様予想などの参考にして下さい。
最終日の模様
「完璧なターンされたっ!」
ピットに戻った菊地孝平の第一声である。天を仰ぎながら、もちろん報道陣に聞かせる意味もあっただろう、菊地は悔しそうに寺田祥の完勝ぶりを表現した。すなわち完敗。カメラを向けたこちらに、こんな表情を見せた菊地。悔しい、しかし寺田にあれだけのレースをされたら負けても仕方ない。完敗だが、真っ向から戦ったのだ。それが菊地に高揚感をもたらしているようであった。
寺田はゆっくりと時間をかけてウィニングランをしているが、その間、菊地と新田雄史はメダル授与式を待つことになっていた。戻ってきた寺田を、菊地は「完璧だった。あんなターンできるなんて」と、少しばかりの悔しさを滲ませながら称えている。そして、「早く(授与式)やるよ」と急がせる(笑)。新田も「巻いてもらっていいっすか! もっと握って握って!」と急かしていた(笑)。これも敗者たる彼らなりの祝福であろう。もっとも新田のレース後の表情は、かなり険しかった。がっくりと俯く場面もあった。足的には勝てるものだっただけに、ピット離れで寺田を出し抜きかけたことも含めて、あと一歩だったという巨大な悔恨を味わっていたように見えた。
そう、寺田祥は完勝だった! だから、結果的に大きな着となったダッシュ勢は、菊地や新田と比べて淡々としているように見えた。外コースからは手も足も出なかった、ということだろう。もちろん懸命に戦ったが、寺田の背中は遠かった。それが、市橋卓士や吉川元浩の表情を落ち着かせたのかもしれない。
ただ、白井英治はどうだったか。盟友が優勝したことは祝福すべきことだし、かなり時間が経ったあとには笑顔も見えている。ただ、ピット内で行なわれた表彰式に、谷村一哉と原田篤志の姿はあったのに、白井は見つからなかった。まあかなり深読みの類いに近くなってしまうが、そこは顔を出せない感情がやはりあったのかも。下関は白井にとって、純地元。もちろん、2年前の徳山グラチャンでSG制覇を果たしたことも、嬉しい嬉しい地元Vだったが、下関で勝ちたいという思いはかなり強かったはずだ。
そう、2年前のグラチャンと結果は“テレコ”になったのだ。寺田の純ホームは徳山。そこでSG制覇を果たしたのが白井英治。白井の純ホームは下関。そこでSG制覇を果たしたのが寺田祥。1期違いの、もはや親友とも言えるはずの二人が、相手の純地元でSG制覇を果たした。
ただ、徳山だろうが下関だろうが、地元であることには変わりはない。なにしろ徳山グラチャンを制した後、白井は号泣しているのだ。待ちに待ちに待ちに待ちに待ったSG初制覇ではぐっとこらえていた涙を、地元SG制覇では止められなかったのである。というわけで、今日はテラショーが泣くかもしれないな、とちょっとした期待(笑)をしていたのだが、そういうキャラではないというか、クールに喜びを噛み締めていた。まあ、写真のようなポーズを作るあたり、実際は相当にテンションが上がっていたものと思われる。それを派手に出さないのがテラショースタイルということだ。
会見で印象的だったのは、「今年は徳山周年(1月)と今回しかやれていない。たいした成績を残せていない。この優勝で、さらに頑張らなければという気持ちになっている」という言葉を力強く吐いたことだ。たしかに今回は完勝で、しかも準パーフェクトのぶっちぎりV。それを強い気持ちで成し遂げたのは確かだが、いざ振り返ってみると、これで賞金ランク4位に浮上したことにふさわしい成績を残せていないという反省が浮かんでくるわけだ。もちろん、グランプリに6位以内で出場ということが視野に入ってきたことも含めて、ここからが勝負どころと寺田はさらに気持ちを引き締めたのである。
さあ、そんな寺田がこの秋から冬にかけて、いったい何を見せてくれるだろうか。ちなみに3年前のメモリアルを制した後にはGⅠを優勝して、グランプリはトライアル2ndからの登場となっている。さらに気合を心に仕込んだ今年は、さらに躍動する秋から冬になるかもしれない。前回のメモリアルVも今回も準パーフェクトV(2号艇で2着だったのもまったく同じ)と爆発的な勝ち方を見せる寺田だ。ネクストインパクトがどんなものになるか、楽しみにしていよう。
12R優勝戦
①寺田 祥(山口)10
②新田雄史(三重)10
③菊地孝平(静岡)11
④市橋卓士(徳島)17
⑤白井英治(山口)22
⑥吉川元浩(兵庫)18
舟券〆切の3分前、4階の記者席から西スタンドの屋外に出た瞬間、ハッと息を呑んで立ち止まった。
人、人、人。
それは、私の目にひどく異様な光景として映った。ここ半年ほど、ビッグレース優勝戦の“観客”は私を含めて数人(記者やカメラマン)しかいなかった。だだっ広いスタンドに私ひとり、ということもあった。春先、初めてその状況に出くわしたときは、今日よりももっと不思議な感覚に襲われた。近未来のSF映画の主人公が、人類が滅亡したパラレルワールドに紛れ込んだような……だから、眼前を疾駆するファイナリストの6艇は現実味が乏しく、何かしらの映像を観ているようだった。
たったひとりのSGファイナル鑑賞。
それはとても贅沢な感覚であり、誰かしらに申し訳なくもあり、同時にひどく孤独だった。
そう、半年の間に、私はそんなSFチックなパラレルワールドの住人として“慣れてしまった”のだ。
人・人・人。
立ち止まって、180度の周辺を見回す。人数限定とはいえMAX2000人。GIの優勝戦くらいの賑やかさで、老若男女が会話をしたり水面を見たりスマホをいじったりしている。パラレルワールドの住人が突然、かつての日常へとタイムスリップしたら、やはりしばらくは立ち止まって周囲を見回すだろう。「有観客レース」をうっかり忘れていた私は、チグハグな感覚のまま観衆の中に入り込んだ。
ファンファーレが鳴って、自然発生的に拍手が沸き上がる。
「テラダーーーッ!!」
「エイジーーーー!!」
あちこちから聞こえる歓声。
ひどく異様と思えたその空間が、徐々に鮮明な色合いを帯びはじめ、どんどん懐かしい感覚へと変わっていく。
SGの優勝戦に、たくさんの観衆がいる!
12秒針が回って歓声、内3艇が横並びの隊形でスリットを通過してまた歓声。寺田がしっかり逃げて、さらなる大歓声!! この瞬間、ここ数年で私なりにいちばん大枚を叩いた舟券は紙屑になったのだが、今日はさほど悔しいという気持ちにはならない。
菊地、新田、市橋の熾烈な2・3着争いに、スタンド中が熱狂している。一喜一憂しながら何事を叫んでいる。最終ターンマーク、新田が追いすがる市橋をギリギリ振り払って大歓声。準パーフェクトVでゴールを通過した直後の寺田のガッツポーズに、拍手、万歳、「おめでとーー!!」の絶叫。
今日の客は地元限定だから、そのあたりのリアクションにはまったくブレがない。これまでも、無観客のスタンドの前で多くの勝者がガッツポーズを繰り出したが、それはやはり私に違和感や申し訳なさを感じさせたものだ。今日は、違う。
嗚呼、寺ショーが勝って良かった。
思い思いに寺田を祝福する人々に囲まれて、そんなことを思う。そして、こう思った。
まだ完全じゃないけど、俺たちのボートレースがやっと帰ってきた!
下関の上空に花火が打ちあがる。客がいるからこその花火。「わあっ」という歓声とともに、人々が一斉に空を見上げる。赤や青や黄色や緑や橙色が、鮮やかに私の網膜に飛び込んできた。
5日目準優勝戦日の模様
地元優出チャレンジの先鋒は谷村一哉。しかし、4カド湯川浩司がスリット後に伸びていき、この攻めを真っ先に受けるかたちになってしまい万事休す。優出は果たせなかった。うなだれて戻ってくる、といった感じではなかったけれども、無念がなかったはずがない。この鬱憤はまず明日の1Rで晴らしたいところだ。
勝ったのは菊地孝平。湯川の青いカポックも見えていたようだが、冷静に先に回って押し切った。エンジン吊りの際も、控室に戻る際も、仲間と声を掛け合って、テンションが高くなっているところを見せていた。先に書いてしまうと、今日はイン12連勝なので、結果的に優勝戦は3号艇。内の2人の仕上がりがかなりのものなので、攻略するのはそう簡単ではない(足も、グラチャン=優勝戦3着のときのほうが良かった、と)。それでも、IQレーサーの異名をとる男が、手をこまねいているはずがないだろうと思う。どんな戦略で優勝戦に臨むか、注目したい。
2着は市橋卓士。5年前のメモリアル以来、2度目のSG優出となった。そのメモリアルは3周2マークで転覆。ゴールできずに終わってしまっている。そのリベンジというか、悪い思い出を払拭したいというか、そんな思いはもちろんあるようだ。
それよりも、記者会見で口にした言葉には、ちょっと驚いてしまった。「40歳にもなったし、一発勝負というターンをしたい」もなかなか強い言葉だったのだが、「ボート人生を懸ける、と言ったら大袈裟ですけど、一世一代の勝負をしたいですね」はかなり強烈な決意表明だ。2着であがってきても淡々とした様子だった市橋が、ここまでの巨大な思いを抱いているという、そのギャップにも驚いた。市橋のなかでどんな思いが渦巻いているかまではわからなかったが、明日の気合の入り方は地元SGVに燃える男たちと同等のものと言える。彼の「一世一代」がどんな形に結実するか、しかと見届けさせてもらおう。
10R 持って歩きたい
地元優出チャレンジの中堅は白井英治。谷村同様、下関は純ホームと言えるプールだけに、何としてもの思いはあっただろう。会見でも「初めて下関SGで優勝戦に乗れたのが嬉しい」と口にしている。そう、白井は2着で優出。隣にエース機・石渡鉄兵がいたが、冷静に差してファイナル行きを決めた。
ただ、レース後にヘルメットを脱ぐと、出てきたのはしかめ面。やはり1着で行けなかったのが悔しい? いや、白井のレース後というのはこの表情が多いのであって、時には1着でも変わらなかったりする。その瞬間は、ただレースを反芻しているということだろうか。同時に、「優勝戦では(足色は)目立つことはないでしょうね」という仕上がりに思いを馳せていたか。下関SGの優勝戦だけに、このままでは面白くないという思いをさらに強めていた可能性はある。
一方、勝った新田雄史は「持って歩きたいくらいモーター」と相棒を評した。これは最高峰級の評価と言えるだろう。特に強いのは出足、行き足。まさに新田らしい仕上がりであって、常にこのモーターで走れたら、という思いが浮かぶのは自然なことでもある。まあ、他の場でも同じ噴き方をするかどうかは別ですが(笑)。それでも、新田にとってかなり満足のいく足になっているのは間違いない。
ちなみに、この仕上がりになったのは初日の後半、逃げ切り勝ちを収めたときだという。その感触に、「これは優勝戦に乗れると思ってました」とまで言うのだから、とてつもない相棒と出会っていたのである。優勝戦で、地元勢の脅威となるのは、やはりまずこの男だろう。
11R 地元V王手
地元優出チャレンジの大将は寺田祥。まあ、あの超抜パワーで予選トップの1号艇だから、もし飛んだとしたら事件と言えた。もちろん、きっちり逃げ切り。2コースの吉川元浩は「上を行こうと思ったけど、寺田がふところを開けていたので差しにいった」と会見で言っていて、付け入るスキがなかったわけではなさそうだが、しかしそれを補って余りあるパワーと気合で逃げ切ってみせた。これで地元SG制覇に王手! 仕上がりからすれば、優勝の可能性はかなり高いだろう。
控室に戻ろうとする寺田を、菊地孝平が祝福。別れ際に菊地がかけた言葉が「明日は簡単に逃がさないぞ」と聞こえたのだが、果たして(規制線の外側ではハッキリと聞き取りづらいのです)。そうした牽制(?)なども受け止めつつ、3年ぶりのSG制覇へと爆走する。
2着は吉川元浩。吉川もかなりの仕上がりだが、なにしろオール①-②で決着した準優勝戦、吉川は6号艇である。5号艇に地元がいて、4号艇に一世一代の勝負と燃える男がいて、吉川本人も第一感は「動いても誰も入れてくれないでしょうから……」となるわけである。今夜、また明日の午前中なども作戦に思いを至らすことになるであろうが、どんな答えを出してくるか。それによって、展開も変わってくるだろう。
準優出場メンバー決定
3ケタ配当3発あり万舟3発ありの両極端の勝負駆けデーが終わり、下関SGメモリアルの準優18PITが確定しました。予選トップで11R1号艇に君臨するのは地元の特攻隊長・寺田祥。大整備で超抜モードまで引き上げた70号機とともに、3年ぶり2度目のメモリアル制覇となるか。予選2位の新田雄史、3位の菊地孝平も1号艇をGETしています!
準優勝戦
9R
①菊地孝平(静岡)
②市橋卓士(徳島)
③谷村一哉(山口)
④湯川浩司(大阪)
⑤馬場貴也(滋賀)
⑥太田和美(大阪)
10R
①新田雄史(三重)
②白井英治(山口)
③石渡鉄兵(東京)
④桐生順平(埼玉)
⑤松井 繁(大阪)
⑥羽野直也(福岡)
11R
①寺田 祥(山口)
②吉川元浩(兵庫)
③峰 竜太(佐賀)
④片岡雅裕(香川)
⑤仲谷颯仁(福岡)
⑥中澤和志(埼玉)
4日目の模様
別稿にあるように、トップ争いはあっさりとケリがついた。寺田祥が準パーフェクトペースで1位通過だ。3年前の若松メモリアルの再現が近づいてきた。レースを見れば一目瞭然、仕上がりは抜群だ。レース後の寺田はやはり余裕が感じられるたたずまいで、10R終了後の1便で帰宿している。
3日目終了後は得点率で寺田に並んでいた峰竜太は、7R1マークで艇が大きく煽られて、なんとか転覆は免れたもののシンガリ負け。11Rも5着で、7位まで後退している。11R後は複雑な表情をしていたが、7位うんぬんではなく、ゴンロクを並べてしまった今日について、さまざまな思いが交錯していたということだろう。
峰とは逆に、3日目終了時点で7位だった菊地孝平が3位に上昇、準優1号艇を手にしている。それも、10R3周1マークで中野次郎を逆転しての3着浮上、これが決め手となった格好だ。ピットに戻ってきた菊地は、1号艇が手に入ったことを知ってか知らずか、充実感が伝わる表情を見せていた。あの逆転旋回は勝負手だったに違いなく、それが実ったのは3着とはいえ会心だっただろう。
ボーダー争いについては、特に後半戦については、わりと穏やかだったように感じた。前半で井口佳典がFで脱落し、3日目終了時点で16位~18位だった選手が順位を下げるというかたちで、すなわり上位から一気に滑り落ちた選手はいなかったし、19位以下から浮上した選手も1号艇で勝負駆けだった選手が多かった。そんななかで、やはり松井繁の予選突破は光りますね。不良航法マイナス10点をものともしなかった気迫の勝負駆け成功。王者の意地をまざまざと見せつけられた格好だ。
11Rでは馬場貴也が逃げ切って勝負駆け成功。実はこの馬場の結果が、大きなカギを握っていた。その時点で18位だったのは赤岩善生で、得点率が5.80。馬場が逃げ切れば6.00だから、これを超えることになる。もし逃げられなかったら、12R6号艇の磯部誠が2着で5.83と赤岩を超える。磯部が3着以内なら赤岩が逃げ切りとなる。11Rは2号艇に峰竜太がいたりしたので、馬場としても予断を許さなかったイン戦だったはずだが、きっちりと逃走。安堵の表情を見せた。
これで準優18人が決定かというとそうではなかった。磯部が1着なら6.17なのだ。つまり、結果的に5人になった得点率6.00の面々のうち、最下位だった中澤和志が落ちることになるのだ。まあ、6号艇で1着というのはなかなか至難の業ではあるのだが……。ちなみに、磯部はその状況を把握していた。私が教えたから(笑)。10R発売中に状況を尋ねられたので、先の条件を伝えた次第だ。まあ、それでどこまで気合が入ったかはなんとも、だが、「俺の緑、けっこうあるもんね」と言っていたから、望みを捨てることなく、本気でアタマを獲りに行こうと戦ったはずである。そう、磯部の6号艇、けっこう来ますからね。残念ながら4着も、サバサバしているように見えたレース後ではあった。
勝負駆けとは関係ないところでは、毒島誠のカタい表情が印象に残る。1着でも得点率5.50と18位には届かなかったのだが、これがまさかのシンガリ負けである。1号艇でこの結果は、毒島にとって大きな屈辱であろう。
その毒島を沈めたのが、3コースから強ツケマイを放った平高奈菜だった。石渡鉄兵の差しを許して2着ではあったが、お見事な一撃である。レース後は原田幸哉に称えられていたし、出迎えた森高一真もニコニコ顔を向けている。1着でなかったのは悔しかろうが、平高にとっても手応えを感じるレースだったはずだ。森高と肩を並べながら時に浮かべる笑顔は、実に爽快なのだった。
2R発売中、ピットがにわかに慌ただしくなった。東京支部を中心に、駆け回る選手たち。やがてボートリフトの脇あたりに彼らは集合。するとそこに、「中野」のプレートが着いたボートが曳航されてきた。そう、中野次郎が試運転で転覆してしまったのだ。その他の選手の試運転はいったん休止となり、中野の艇を曳航することが優先された。そしてピットでは大急ぎでボートを引き上げ、転覆整備の準備が始まっていた。
幸いにも中野は無事で、陸に上がると急いで控室へと向かっている。すぐに着替えて、転覆整備を行なわなければならないのだ。これまた幸いというか、今日は10R1回乗り。整備の時間に余裕がある。それでも中野は仲間のヘルプを受けながら急ぎ整備を進める。これが勝負駆けにどんな影響を及ぼすか、気にかかるところではある。
2Rでは、井口佳典がフライングを切ってしまった。3日目連勝で勝負駆けに持ち込んでの6号艇、気合が入りすぎたか。下関のボートリフトは6艇が一気に乗り込めるので、真っ先に帰ってきた井口はリフトに乗ったまま、レースが終わって他の5艇が帰ってくるのを待たなければならなかった。いったいどんな思いで、一人リフトでの時間を過ごしたのか。陸に上がって、井口はすぐさま競技本部へ。その表情はただただやるせないものだった。
で、通常はレースが終われば艇旗艇番を取り外すものなのだが、東海勢はそれをしなかった。気づいた大山千広が外そうとしたら「あ、いい、いい」と菊地孝平。ようするに、賞典除外となって明日は間違いなく6号艇が回ってくるだろうから、今日の艇旗艇番はステイでオーケーということらしい。仲間たちのそんなちょっとした振る舞いが、井口にとっては癒しになるかもしれない。
勝負駆けの一日、いきなりハプニングが起こったわけだが、早い時間帯のピットは、実はこれ以外は大きな動きがなかった。昨日よりは選手の往来も多く見られたが、大きな整備をしている選手もおらず、ただペラ調整室から聞こえてくる金属音は昨日よりもボリュームがあったように聞こえはした。ペラ調整組では、白井英治が眉根にシワを寄せて、集中してのペラ叩き。無事故完走で準優当確とはいえ、できるだけいい枠番で乗ろうとするなら、さらなる上積みが必要ではある。それを視野に入れての、調整ということになろう。
峰竜太も、1R発売中にペラ調整室に入っている。こちらはトップ争いを完全に視野に入れての予選最終日。足的には中堅と本人も言っており、こちらも上積み果たしてトップ通過をもくろんでいることだろう。
そうそう、1R終了後、徳増秀樹がモーターを外して整備室に持ち込んでいた。1Rは6着大敗、準優は絶望的だが、6Rは1号艇である。ここは取りこぼせないと、整備を決意したのか。しかし、6Rまでには時間がないが、整備できるのだろうか。というわけで、整備室が覗ける場所に移動して徳増の姿を探したら、ものの数分でふたたびモーターを装着に向かったのだった。正直、何をしていたのかまるでわからなかったな。短い時間でもできることをやった、ともっともらしく記しておこう(笑)。
その1Rを勝ったのは羽野直也。これで得点率は6.00、現時点では勝負駆け成功、ということになる。もちろん、この後の結果次第ではまだ安全圏とは言えないが。羽野は勝っても特に表情を変えず、エンジン吊りも勝利者インタビューも粛々淡々とこなしていた。そういえば、最近のSGで羽野くんのスマイルを見た記憶がないなあ。そしたら、たまたますれ違ったときに拍手を送ったら、「ありがとうございます!」とニッコリ笑ったのだった。もっともっと活躍して、その笑顔を振りまいてください!
なお、今村豊が途中帰郷となってしまった。下関SGを途中離脱するのは無念極まりないことだろう。山口支部の面々には、ミスターの魂を背負って戦ってもらいたい!
3日目の模様
まず、王者・松井繁ファンには残念な報告から。6Rで4コースから伸びなりまくった松井が3コースの原田篤志と接触。さらに篤志→内艇が玉突き状態になっててんやわんや。複数の接触で篤志の45号機はエンジン不調を発症し、タイムオーバーギリギリでなんとかゴールを通過した。このアクシデントの引き金となった松井は不良航法=マイナス10点となった。
まあ、こんな雑多な流れだけを書けば確かに松井が「A級戦犯」になってしまうが、実際のレースは実に微妙なものだった。スリット隊形(進入順)はこうだ。
①磯部 誠 .14
②西山貴浩 .21
③原田篤志 .20
⑥松井 繁 .12
④萩原秀人 .12
⑤長田頼宗 .15
※隊形1236/45
ご覧のとおり、内のスロー4艇は完全な中凹み。3・4コースの差はぴったり半艇身で、しかも松井は(おそらく)全速で伸びて行ったから、まくり戦法は当然の選択だ。松井アタマの舟券を買っている人は、この隊形から直進したら激怒してもいいだろう。
で、松井が当たり前のように絞めたらば、半艇身凹んでいる篤志が捨て身で抵抗した。シンプルに飛びついたと言うより、篤志がまた内の西山よりグングン伸びて行くから「先まくりできるかも!?」という風情で握ったように見えた。『穴・極撰』で◎篤志-○松井の私は、そりゃ篤志を応援しましたよ。奇跡的にブロックが成功して先まくり→予想通りの3-6決着にならないか、などと思ったりもしたものだ。
だがしかし、中凹みの隊形も含めてこの篤志の選択はあまりにも無理筋だった。応援している私の目にも、すぐに「そりゃあかん!」と映った。事実、松井に圧迫されながらも握り続けた篤志は西山を飛び越え、スタートをしっかり行っていたインの磯部に激突。エンジンに支障をきたすこととなった。
この事故は、本当に松井繁だけの“選手責任”なのか?
レース後の裁定を聞いて、私は非常に後味の悪いものを感じた。確かに過去の判例は、「玉突きによる転覆やエンストなどが起きたら、とりあえず最初にその原因を引き起こした選手が悪い。逆に玉突きがあっても大ごとにならなければお咎めなし」という玉虫色の裁定が多く、今回もそれに相当するだろう。絶対的に優位な隊形からごく普通に絞めまくった松井は、「運が悪かった」ということになる。
ただ、不良航法の減点が一気に10点に倍増した今、「しっかり攻めたはずの選手が偶発的な連鎖事故で運悪く厳罰を喰ってV戦線から一発で脱落」という不条理な事態も激増するだろう。それに比例して「スリットから半艇身突出しても、無理はできない、しない」という選手も増えるだろう。イエローカードが廃止になって、何でもかんでもレッドカード一発退場になるサッカーみたいな……。
私個人の意見を書いておこう。
今日の松井の4コース絞めまくりは、実際には-10点を取られるような反則ではなかった。かと言って、抵抗した篤志が悪かったわけでもない。選手はその時々の状況に応じて、コンマゼロ何秒という瞬時に判断して行動に移す。松井も篤志もそうしたらば、不可抗力的にてんやわんやの状況に至った。「水上の格闘技」ボートレースに付き物のアクシデントであり、悪意や危険と知りつつ動いたものではなかった。サッカーのレッドカードがそうであるように、減点10点時代の裁定は「故意や悪意や危険な自覚があるやなしや」というファクターを最優先にしてもらいたい。「見た目に派手な事故、危険な事故が起こったから、とりあえずそのキッカケを作った選手を罰する」という慣例は、そろそろ見直すべきだと思う。閻魔様が天国か地獄かを下す裁定は、人間の悪意のみを汲み取っている。
連勝ストップ
おっと、ついアツくなりすぎた。通常モードに戻そう。
初日7勝、2日目8勝、3日目9勝……「いつも通りのSG」と言えばそれまでだが、今節の下関水面も1号艇=インコースが圧倒的な強さを誇っている。特に今日はスタートがほぼほぼ揃い(3日間の風向き・風速が似たり寄ったりなのだ)、多くの選手の大型整備が当たってパワー相場も均等化し、横一線のイン選手を誰も攻めきれないという「金縛りパターン」が目立ったな。明日の勝負駆けデーは、さらに順繰りのイン10勝?? うーーん、そんな「選手の気合よりもコースの利」みたいな1日、穴党の私は許しませんっ!!
さてさて、昨日は速報形式で「3連勝アタック」を追いかけたが、今日はふたりの選手が「無傷の4連勝」にチャレンジした。第一の挑戦者は、10R4号艇の峰竜太。昨日は5コース&3コースから凄まじいまくり差しを連発した峰だったが、4カドの今日は不発。その最大の敗因は、スリット後に5コース石渡鉄兵11号機の伸びなりのツケマイを浴びたことだろう。峰が差しに構えた瞬間、モロに石渡の引き波が艇尾を直撃。さしもの異次元ターンも、この強烈な引き波でスピードを半減されてしまった。①113着で節間9・50。明日の峰は【7R5号艇&11R2号艇】で予選トップを目指す。
で、峰を引き波にハメたはずの石渡は、その後の展開がなく5着大敗。前半の4Rでも道中2番手から4着に後退した鉄兵は、節間6・00で明日はそれなりにタイトな勝負駆けとなってしまった。【10R4号艇】からどこまで得点を伸ばせるか。あるいは絶対エース11号機のパワーを持て余したままV戦線から去ってしまうのか。今日の気配的には「あと伸びっぽかった直線足が少し手前にきて、行き足のあたりが強めになった」という印象があるのだが、どうか。
次なる「4連勝アタック」は11R2号艇の寺田祥。今日の寺ショーはなんとなんとピストン2×リング4×シリンダケースの「セット交換」を敢行!! 初日のギヤケース&キャリアボデーでパワーの底上げに成功したというのに、もう一丁上のレベルを求めたわけだ。うーーーーん、やっぱこの長州侍は生粋の勝負師だな。
で、このギャンブルは悪い方には出なかったようで、特訓でもスタート展示でもなかなかのスリット足だったし、展示タイム6秒75も今日の2番時計(トップはコンマ01差で石渡)。いざ本番もスリットからイン井口佳典を煽る勢いで出て行ったが、2コース差しは惜しくも届かず2着まで。峰同様に連勝は途切れたものの、ゴキゲンなスリット足といい道中で絡まれた羽野直也をパワー任せにねじ伏せたレース足といい、収穫の大きな2着だったはずだ。1112着は峰と同率の9・50だが、2着がある分だけ暫定トップに立った寺田。明日は【5R6号艇】の一発勝負で、峰よりも一足お先に予選トップの座を狙う(1着でも峰が1・1着なら2位ではある)。長州の特攻隊長がどんな勝負手を放つか、ピットアウトから目が離せないレースとお伝えしておこう。
最後に、3日間36レースを観戦しての勝手なトータルパワー評価を記しておきます。
独断パワー評価
★★★石渡鉄兵11号機=S【出A・行SS】
★★★新田雄史28号機=S【出SS・直A】
★★寺田 祥70号機=A+【出A・直S】
★菊地孝平21号機=A【出A・行A】
★仲谷颯仁59号機=A【出A・直A】
★片岡雅裕31号機=A【回S・直B】
★白井英治43号機=A【出A・行A】
★湯川浩司40号機=A【回B・行S】
初日にも書いたが、石渡11号機のSSは今節の中での相対評価。宮島グラチャンの45号機ほど突出したモンスターパワーではないことを改めて明記しておきたい。
一方、新田の出足・回り足は文句なしのSSレベルか。スリットから自力で突き抜けるだけのパンチ力がない反面、道中の競り合いになったら面白いように他を圧倒して抜け出して行く。あえて一言で評すなら「余裕がありすぎる足」。つまりはイン戦でスリット同体なら百戦百勝の出足~行き足だと思っているのだが、さすがに予選トップは厳しいか。明日の【7R4号艇】の一発勝負で5号艇の峰を蹴散らし、とりあえず準優1号艇を目指す戦いとなるだろう。
同じく非凡な出足・回り足をフル稼働しているのが片岡雅裕だ。今日はイン逃げ&3コースまくり差しの連勝! 菊地孝平のジカまくりに連動した「ごっつあんマーク差し」ではあったが、出口から菊地を突き放していく押し足も強烈に見えた。この20点増しで一躍4位に浮上したマー君。パワーのみならず、近況は選手もノリノリの勢いでどんどん強くなっている印象があり、このまま天辺までの突き抜けも想定しておきたい。とりあえず、明日の【6R6号艇】がひとつの正念場ではあるな。
その他の上位予備軍は、井口佳典(伸び型で合わせきれず、手前に寄せて引き締まったか)、松井繁(-10点でもまだまだ勝負駆け圏内。不気味な行き足に注意!)、峰竜太(パワーかスピードかいちばん分かりにくい)、中野次郎(これも不気味なレース足あり)などなど。この中堅上位あたりは大整備を施した面々も日替わりで出没しており、「予断を許さぬどんぐり状態」だと思っている。(photos/チャーリー池上、text/畠山)
2日目の模様
3連勝アタック第1弾は9R寺田祥。1号艇だっただけに3連勝濃厚に見えた戦前だが、実際は磯部誠の2コース差しにいったんはつかまったかに見える展開。バックで伸びて2マークは先制したものの、冷や汗ものの勝利ではあった。
内容的にはともかく、ピットでは山口勢と軽く苦笑いを交わしたあとは、淡々としたものだった。連勝が懸かっていようがいまいが、地元の1号艇を取りこぼすわけにはいかないわけで、安堵の思いも大きかったか。寺田のメモリアルでの快進撃と言えば、準パーフェクトでSG初制覇となった3年前の若松大会。地元でその再現を果たすべく、明日からさらに仕上げに邁進するだろう。
それにしても磯部は惜しかった。昨日のゴンロクを一気に取り返す差し切りと思われたが、ストレートの足で敗れてしまった。悔しさはあって当然だが、昨日よりはややサバサバしているように見えた。結果は結果として、1着争いに持ち込めたことが安堵と充実感を生んだか。明日は1号艇が回ってくるだけに、さらに勢いに乗っていきたいところ。
3連勝アタック第2弾は10R峰竜太。こちらは3号艇だが、あっさりと勝ち切ってしまった。2連続成功! これで勢いに乗ってしまった峰は、さまざまな選手と言葉を交わし合って笑顔満開。ふと片岡雅裕の姿を見つけると、猛ダッシュで駆け寄ってハイタッチ! なぜマーくんと? 何かアドバイスの交換とかがあったのだろうか。ピットの隅で行なわれている勝利者インタビューでも、弾んだ声がピット中に響いていたほど、テンションが高かった。控室に戻る際にこちらに気づくと、満開の笑顔で「やるばい?」と誇らしげ。つーか、峰竜太の佐賀弁(?)は初めて聞いたかも。ほんと、がばいほどやるたいねえ、峰竜太。
一方で、1号艇で敗れた篠崎元志は、写真の通りの落胆ぶり。峰の笑顔とは対照的に、カタい表情で戻ってきている。同世代の盟友同士が、残酷なほどの明暗を演じてしまった。もちろん、これで諦めてしまうような男ではないだろう。明日の4号艇に注目したい。
3連勝アタック第3弾は11R仲谷颯仁。こちらは4号艇で、1号艇には絶対王者。これで3連勝成功なら値千金であったが、残念なことに敗れてしまった。さすがに王者の壁は高かった。それでも予選を折り返して得点率は8.00。明日の6号艇次第では、準優好枠も狙える位置ではある。
それにしても、レース前の松井繁には実に風格があった。展示から戻ってくると、10Rで展開を作って2着の太田和美と顔を合わせている。そのときの王者の柔らかい表情を見ていたら、なんかもう、イン戦で取りこぼすとかまるで思えなかったのであった。松井も仲谷と同じくここまで8.00。準優、あるいはその先も見据えて、明日の6号艇でもしっかり勝負してくるはずだ。
それにしても、SGで連勝発進が3人とか、無傷の3連勝が複数とか、今まであったのだろうか。このまま寺田と峰が突っ走るのか、それとも二人を止めてさらに上を行く選手があらわれるのか。怖いのはやっぱり、エース機鉄兵だよなあ。
初日の模様
ハイレベルの攻防
今日の私の勝手なベストレースは5Rだ。絶対エースの誉れ高い石渡鉄兵11号機が、4カドのスリットほぼ同体から伸びなりに突進。まくり不可能に思えた横一線から、1マークまでにグングン加速して行った伸び足は迫力満点! 最近の私は伸び型のパワー&選手ばかり追いかけているのだが、こういう「そりゃ無理だろ~!?」みたいな隊形から嘘みたいに出て行くのが「伸び型」なのだ。アレを見た瞬間、「やっぱ今節のトップ直線足は11号機だわぁ」と確信しましたね、はい。
とは言え、この鉄兵の猛攻もひたすら先マイを目指したイン森高一真には届かずまくり差しにチェンジ。森高のイン戦は強めの握りマイが多いのだが、今日は鉄兵が見えたせいかいつにも増して豪快にフルスロットル。当然ながらボートはほぼ真横に流れ、2コース徳増秀樹の注文差しがものの見事に決まった。
もはやこの時点で1着は確定したのだが、その後の2着争いが凄まじい。平本真之が絶品ターンで取りきったかと思うと鉄兵が巻き返し、鉄兵で決まりかと思うと森高がエグイ全速差しで肉薄し、とにかく瞬きひとつできないボートチェイスが繰り広げられた。何というか、初日の5Rとは思えない、まるで準優のような高いレベルの攻防だったな。
で、最終的に2着をもぎ取ったのは、やはりトータルパワーで一枚上手の鉄兵11号機だった。何度も直線で競り合いになったとき、大きくモノを言ったのがスリット後(バックではスリット裏)の伸び足だ。ここで半艇身くらいの余力が生まれる分、次の旋回のマイシロにも余裕ができる。これに加えて、昨日はやや不安視していた出足・回り足もかなりしっかりしていて、後続の猛追をテキパキと封じることができた。森高&平本の出足系統も上々に見えたが、全部の足をフル稼働した鉄兵11号機に一日の長があったと見ていいだろう。読者におかれては、そのあたりのパワー比較も堪能しつつリプレイをご覧いただきたい。ミスらしいミスもなく2番手から4着に甘んじた平本55号機に関しては、「相手が悪かった」としか言いようのないレースだったと思っている。
この他のトピックスは、私なりの独断のパワー鑑定とともに紹介していこう。
足色別の独断パワー評価
ストレート系
★★★石渡鉄兵11号機=S
★★井口佳典17号機=A+
★★徳増秀樹33号機=A+
★平尾崇典74号機=A
★湯川浩司40号機=A
☆磯部 誠73号機=穴
トップ指名の石渡については前述のとおり。スリット~1マーク、道中の大接戦のどこを切り取っても伸び足が際立って見えた。ただ、宮島グラチャンの徳増45号機(その後の転覆で、今はごく普通の上位機に陥落)ほどのモンスターレベルには至っておらず、現状ではSランクが妥当だと思っている。
ドリーム戦で4着に敗れたものの、井口17号機の直線足もゴキゲンの一語。今日のスタートは明らかにアジャストしてしまったが、道中で白井英治を追い詰める足色は鬼の部類と見ていいだろう。
で、徳増・平尾・湯川はいつでもどこでも行き足を重視するタイプで、今節は初日からその部分の足がそれなりに仕上がった印象がある。それにしても、今日イチのサプライズは11Rの湯川の4カド一撃まくり! 多分にダッシュの利が幸いしたスリットにも見えたが、まさかあの隊形からインの田村隆信まで攻め潰すとは……。「11号機の他にスリット同体からまくりきれるパワーは皆無」などと思っていたが、この3人はさらにストレートがアップする可能性があるので常にスタート展示&展示タイムに注意を払いたい。
出足・回り足系
★仲谷颯仁59号機=A
★森高一真63号機=A
★片岡雅裕31号機=A
★白井英治43号機=A
★平本真之55号機=A
湯川が4カドまくりなら、7Rの仲谷は5コースまくり差しという大技を決めた。スタートはやや後手にも見えたが、そこからじわじわ出て行って「えいや!」の全速ぶん回し。若いスピードに拠る部分もあるけれど、4本ほどの引き波を横断して逃げる魚谷智之まで捕まえたレース足は天晴れの一語。天賦のターンセンスも込み込みで、今節の台風の目になりそうだ。
一方、ドリーム3着の白井43号機は「悪くはないが」というレベルで前検ほどの迫力は感じられなかった。道中でも井口の猛追を浴びてふらふらしているように見えたし。スタートで挟まれるような隊形になった影響も大きそうだが、私の買い被りの可能性も含めてAランクに留めておきたい。
バランス系
★★新田雄史28号機=A+
★菊地孝平21号機=A
★中野次郎16号機=A
★馬場貴也25号機=A
★吉川元浩42号機=A
ここで特筆したいのは、もちろん新田28号機。1R(3着)の足色は期待したほどではなかったが、8R後の勝利インタビューで「前半は調整を大幅に外していた」と聞いて納得。その8Rはインからズンズン伸び返して余裕たっぷりの逃げ圧勝だったし、まさに全部の足がしっかり強いバランス型という印象を受けた。「三島リスト」のツートップが初日からそれぞれの特長をアピールしたわけで、伸び~る11号機との直接対決が今から楽しみだ。
整備でパワーアップ
☆☆寺田 祥70号機(ギヤケース・キャリアボデー)
☆赤岩善生60号機(電気一色・ギヤケース)
☆長田頼宗27号機(ピストン2・リング4・シリンダケース)
昨日まで泣きが入っていた地元の寺田70号機が、大整備を経由して3コースまくり発進! それまで一走もしてないから「大幅アップ」かどうかは分からんのだが、ターンの初動からイン萩原秀人を引き波にハメるまでの強ツケマイは迫力満点だった(萩原がワースト級の可能性もあり)。
整備をしたものの……
▼今村 豊62号機(ギヤケース)
▼今垣光太郎69号機(ピストン2・リング4・シリンダケース&リング4)
▼久田敏之30号機(キャリアボデー)
▼西山貴浩46号機(電気一色・キャブレター)
▼田村隆信51号機(ギヤケース・キャリアボデー)
一方、同じく大整備を敢行したこの面々は、スリットから道中からどうにも冴えないレースっぷりだった。ただ、部品が徐々に馴染んで良化するケースもあるので、明日からも足色の変化には注意しておきたい。ちなみに西山は今日のレース後にさらなる大手術に踏み切ったという情報もあり、明日は「西山=ワースト級」という先入観をリセットして対峙したほうが良いかも??(photos/黒須田守、text/畠山)
注目モーター・前検情報
★石渡鉄兵=11号機
エースの片鱗は見え隠れしたものの、確信を持って「やっぱ抜けている!」と断言できない前検でした。足合わせは湯川浩司&寺田祥とマッチアップして、どっちもターン直後の出足はやや甘め。出口を過ぎてからじわじわ伸びはじめ、スリット裏からグングン加速するという典型的な伸び型パターン。スタート練習も起こし~出足・行き足までさほど目立たず、記者席のあちこちから「ぜんっぜん目立たんやん」とか「あれれ~~??」みたいな落胆の声が噴出。ただ、3本目の5カドはスリットから出て行くムードを醸し出しましたね。すぐに減速したけど。まあ、これでしっかり前検タイムが出るようならストレートは問題なし。手前の足がやや心細いという仕上がりだったと思います。現時点ではAまで。
さてさて、私なりに良く見えた人機を列挙していきます。今日のところはひとまずAランク均一で。
A級(上位候補)
★白井英治=43号機
これはもう出足&回り足! 井口佳典との足合わせでターン出口からシュッと突き放した瞬間の加速感に惚れ込みました。スタート練習でも起こし~出足のツナギが絶品! その後の足はソコソコ程度も、ドリームの2コースにうってつけの出足タイプとお伝えしておきます。しっかり10点以上を取り込めば、地元の利で予選トップもあると思いますよ!
★井口佳典=17号機
そのドリームでスリット付近の加速感がゴキゲンだったのが井口。足合わせもそうだったけど「手前の白井、直線の井口」という特色とともにドリーム班ではふたりが目立ってました。選手の性格的にもココの部分の足があればどうなるか、多くを語る必要もありませんな。今節は「前付け艇を入れてのカド一撃」などという変則攻撃も警戒しておきましょう。
★平高奈菜=50号機
今節の「良く見えたもんは仕方がない」はコレ! 50号機は28%だし展示タイムも水準以下だし、数字的にはまったく強調材料がないのに、ターン出口からの押し足~スリット付近の加速感が妙に軽快に見えてしまった。軽量の女子力があっての見え方かも、ですが「直前の繰り上がり参戦」という流れ・勢いも含めて随所に穴を狙ってみたいっすね。怪我(腕の骨折)が完治していることを祈りつつ。
★新田雄史=28号機
三島リストで二番手評価の「S」が授けられた28号機。確かに悪いムードはないっすね。特に足合わせで篠崎元志、平本真之を出口でシュッと突き放した出足、押し足はゴキゲンの一語。この部分だけ見たら同じく「S」を付けたくなりましたが、スタート練習の出足~行き足が期待したほどは目立たなかったのでAにしときます。選手のタイプ的には出口の押し足が強いだけでも相当な武器になる相棒だと思います。
★馬場貴也=25号機
これも足合わせが出色。外・吉田拡郎をターン出口からスーーッと滑らかに突き放す行き足に「オッ」と唸ってしまった。その拡郎は柳沢一より行き足が優勢だったから、三段論法でも馬場25号機の行き足はかなり優秀なはず(笑)。ただ、新田と同じくスタート練習では他と変わらず、ほんの少しだけ力感がある程度にしか見えなかったのでAランクまで。いざ実戦では強烈なパワーを発揮する可能性が高い気がします。
他では今村豊と片岡雅裕の出足、丸野一樹と羽野直也、瓜生正義の行き足、桑原悠の伸び足あたりが強めに見えておりました。で、前検タイムが届きましたが、今日のこの数字には風のイタズラが混じってます。前半(第1班~6班)は3m前後のホーム向かい風、後半は逆に3m前後のホーム追い風に急変。ここまで違うと後半の選手が速いタイムを出せるわけもなく、別物の数字として考える必要がありそうです。
前検時計・前半のTOP10
①平尾崇典 6.71
②石渡鉄兵 6.72
吉川元浩
寺田 祥
⑤徳増秀樹 6.73
原田幸哉
湯川浩司
市橋卓士
峰 竜太
⑩魚谷智之 6.74
原田篤志
前検時計・後半のTOP5
①羽野直也 6.79
②岡崎恭裕 6.80
桑原 悠
磯部 誠
永井彪也
やはり、トップの平尾はじめ速い時計はベテラン勢に集中しましたね。気になる石渡11号機はしっかり2位にランクイン。期待と不安が交錯するような1日でしたが、いざフタを開けたら「やっぱケタチだ~!!」と全国のファンが悶絶するような実戦に期待しましょ。で、後半の16選手はほとんどが6秒79~6秒83の僅差に密集。見た目にも大差のないストレート足でありました。
前検ワースト5
①西山貴浩 6.88
②中野次郎 6.85
平本真之
③松井 繁 6.83
桐生順平
上野真之介
こちらは前後半をまとめてしまいましょ。後半チームの西山が断然のビリケツで、確かに見た目にもスリット前後で置き去りにされている雰囲気がありました。一方、前半組でここにランクインした中野、松井、桐生はかなり直線足がヤバイ可能性もありそう。明日のドリーム戦の展示タイムと照らし合わせる必要がありそうですね。
取材規制下の下関ピットにおける撮影可能場所のひとつは、もろに整備室内が見られる位置。というわけで、選手の姿をファインダー越しに追いながら、ちらちらと整備室を覗いたりしていたわけだが、今日は何やら、いきなり本体整備を始める選手が多いように思えた。前検日から本体を外している選手は、普段はそれほど多くはないのだが……。
赤岩善生が外していたのは、ある意味、ルーティンのうちである。松井繁が外していたのには、ちょいと驚いたぞ。大きな整備をしているような雰囲気はなかったのだが、前検日の王者の本体整備はこれまでに見た記憶がない。
久田敏之も本体整備をしていた。桐生代表として、常連だった山崎智也の名前が今回はない。代わり