掴め王者の栄光
輝け最強の誇り
2020/12/15~12/20にボートレース平和島で第35回SGグランプリが開催されます。
優勝戦メンバー
12Rグランプリ優勝戦
①峰 竜太(佐賀)
②西山貴浩(福岡)
③寺田 祥(山口)
④新田雄史(三重)
⑤平本真之(愛知)
⑥松井 繁(大阪)
11Rシリーズ優勝戦
①池田浩二(愛知)
②深川真二(佐賀)
③坂口 周(三重)
④前本泰和(広島)
⑤秦 英悟(大阪)
⑥石渡鉄兵(東京)
第35回グランプリは、2014年以来4回目となる平和島開催だ。1億円をかけた舞台に立てるのは18人。始まりも終わりも平和島となった、2020年のSGロードはどんな最終章を迎えるだろうか。
モーター、枠番と恩恵があるトライアル2nd組。中でも注目はやはり峰竜太(佐賀)だ。今年はSG1回、G1で4回含むV13とボート界最強の名を独り占めにしている。自身2度目のグランプリ制覇へ疑う余地はない。毒島誠(群馬)は10月にダービー準V、11月にチャレンジカップVとバイオリズムを合わせてきた。吉川元浩(兵庫)は平和島クラシックでのV再現を狙う。篠崎仁志(福岡)、深谷知博(静岡)と今年SG初制覇を飾ったニュースターへの期待も高い。寺田祥(山口)は、自身3度目のグランプリで初ファイナルへ。
下克上を狙うのがトライアル1st組。瓜生正義(福岡)は前哨戦となった10月平和島周年でのVが心強い。白井英治(山口)は、10月に引退した師匠の今村豊にグランプリ制覇を報告したい。茅原悠紀(岡山)は2014年平和島グランプリで6コースVをド派手に決めている。同レース準Vの菊地孝平(静岡)は、6年越しの雪辱戦だ。
2度目のグランプリ制覇に挑む井口佳典(三重)に、初Vを目指す新田雄史(三重)、平本真之(愛知)、岡崎恭裕(福岡)にも注目だ。松井繁(大阪)は歴代最多23回目のグランプリ出場と貫禄十分。グランプリ初出場の西山貴浩(福岡)も旋風を巻き起こす。徳増秀樹(静岡)、前本泰和(広島)は調整手腕を発揮し頂点へ。
情報をどんどんアップしていきますので、皆様予想などの参考にして下さい。
SGグランプリ・グランプリシリーズ最終日・優勝戦
グランプリ
畠山の優勝戦予想で記されていたように、平本真之はスタート特訓にチルト1度で臨んだようだ。スリットから伸びての一撃をもくろんだわけだ。しかし、これがまったく使えないと、平本はマイナス0・5度に戻している。「あのまま行ったら、絶対コケてた」。平本の走りを間近で見ていた西山貴浩も「平本さん、何しよん!」と心配したそうだ。というわけで、特訓は10R発売中だったから、急ぎプロペラも叩き直し。ということで、平本は毒島誠ばりのギリペラで本番に臨んでいる。それ自体は、満足のいく調整ができたようだ。
その平本よりさらにギリペラになったのが新田雄史だ。平本がペラ室を出た後もハンマーを振るい続け、納得のいくまで叩いていたのだ。仲谷颯仁がゲージの片づけを手伝っていたほど。叩き終えて「よしっ」と小さくつぶやいた新田は、顔なじみの記者さんに「優勝してくるわ」と宣言して係留所へ。展示ピットにボートをつけたのは、もちろん最後である。
12R直前、西山貴浩の表情がなんとも凛々しくなっていた。今まで西山に「凛々しい」なんて表現、使ったことあったかなー。それくらい、いい顔になっていたのだ。グランプリのファイナルに駒を進めたことが、すでにこの時点で西山を強くしたのではないか。そう思えた。待機室の前で、入念なストレッチを施す西山。その動きひとつひとつも力強く、万全で優勝戦を戦えそうな雰囲気を漂わせた。
最も早くカポックと勝負服の装備を調えたのは、松井繁である。まだ西山がストレッチを始めるよりも前に、緑色を身にまとっていた。2年間、この舞台から遠ざかり、50代になって戻ってきて、ファイナルまで進んだ。もちろん、王者の思いはそこでストップするはずがない。枠がどうであろうと、対戦相手がみなはるかに後輩であろうと、本当に戻るべき場所は表彰台の真ん中だとの気合で、そのグリーンの装備を身に着けたはずだ。
昨日も書いたが、寺田祥は「今村(豊)さんの分まで」の思いで、この優勝戦に臨んでいる。そりゃあ最後は自分がひたすら勝ちたいという思いが大きくなったに違いないが、それがかなえば今村さんに最高の報告ができる。レース直前の表情は実に気合が感じられるものだったし、強い思いはじんじんとこちらにも伝わってくる雰囲気だった。
そうした努力や思いをまとめて粉砕した峰竜太! 2年ぶり2度目のグランプリ制覇を、コンマ01という背筋が寒くなるようなスタートを決めて、もぎ取ってみせた。まさしく完勝! 1マークのうねりが気になって、少々漏らすターンになってしまったようだが、それでも他を寄せ付けない旋回で、1マークでほぼ決着をつけたと言っていいだろう。
2年前のグランプリ優勝戦直前の峰竜太とは、今日は明らかに違っていた。一言で言って、逞しく見えた。緊張はしているだろうとうかがえたが、そこでうろたえているような様子は微塵も見えなかった。
実際は、シリーズ記事で書いたように、先輩が先に優勝していたことのプレッシャーはあった。「負けて帰って、それでも真二さんにおめでとうございますと言うのは違うと思った。だから負けられないと思った」というプレッシャーだ。そして、峰がこのところ常に感じているプレッシャー。それは「自分は期待されている」というものだ。1号艇で1番人気に支持されるというのもその類にはなるだろうが、今や艇界最強とまで謳われるようになった峰には、つまり期待に応えるためにそれにふさわしい走りをしなければならないという重圧を感じながら戦うようになっているのだ。選ばれし者しか感じることのできない境地に、今の峰は至っている。峰自身、その自覚もある。だから、スーパー大舞台で1号艇という立場では絶対に負けられない。そうした強烈な呪縛にも似た感情を抱いて、峰は走るのである。
それが、もしかしたら峰を逞しく見せる一端なのだろうか。ただただタイトル奪取を願い、しかしかなわず、自分に自信がもてずに悩んだ頃の峰竜太ではない。どんな期待も、あるいは批判にしたって、受けて立とう。そんな決意にも似たハートを持つ者は、陸の上でも強さを発散する。今の峰は、きっとそんな男になったのだろう。
で、そんな峰が、やっぱり泣くんだ、これが(笑)。昨日の優出会見では、優勝しても泣かないと断言していたのである。ところが、深川真二と上野真之介が出迎える係留所まで帰ってくると、大きな嗚咽が聞こえてきた。わ、泣いてる。直感して、ピットに戻ってきた峰を見たら、もう号泣である。それを見て、松井繁がめっちゃ笑ってました(笑)。
ウィニングランを見た方も、泣きじゃくる峰竜太を目撃したことだろう。写真は、スタンドを通過し切った、ピット目前の様子。ファンの前では涙しながらも顔をあげて手を振っていたが、ファンの姿が見えなくなったら下を向いてさらに号泣。スタンドから歓声をあげて祝福してくれるファンを見て、さらに涙が止まらなくなったんだろうなあ、きっと。
実は峰の涙というのは、自分の勝利とか敗北とか、そのこと自体にというよりは、その向こうに見える「人」を思ってのものというのが本質だと僕は思っている。今日も、ピットに戻ってきたら深川先輩が笑顔で出迎えていて、そのことに泣いた。ファンがたくさん自分を祝福してくれて、そのことに泣いた。実際、会見でも「いろんな人たちの顔が浮かんでくるんです。家族とか、仲間とか、僕を支えてくれる人がたくさんいる」と語っている。BOATBoyでインタビューした際、いきなり泣き出したことがあった。GⅠ初優勝となった09年九州地区選の話題になったときのことだ。GⅠ初優勝の感激を思い出したのではない。優勝戦の日、先輩の三井所尊春が本来峰がやらねばならない仕事などを全部受け持って自分をサポートしてくれたことを思い出して、泣き出したのである。峰の涙の奥には、常に自分を支え、育ててくれる人の存在があるのである。
今日も先頭でゴールしたときに見えた、あるいは脳裏に浮かんだたくさんの人たち。ピットに帰ってきて目に入った深川先輩をはじめとする多くのレース仲間。それが、泣き虫王子を久々に降臨させた。峰にそのつもりはなかったとしても、降臨するに決まっていたのだ。
会見が終わり、控室へ戻る峰が、僕の姿を見つけて――ちょっと自慢になりますが――やったーと抱き着いてきた。久々に交わす抱擁である(実は一昨年のグランプリのときもあったのです)。選手との接触をかなり制限されている今節ですが、最後の最後なので許してください(フェイスシールドとマスクもしてました)。おめでとう、祝福するこちらに峰は即座に、力強く言い切った。
「僕、強くなったでしょ」。
うん、強くなった。逞しくなった。それでも、だ。どんなに強くなっても、逞しくなっても、「泣かない」とか宣言したとしても(笑)、今後も峰竜太は人を思って泣き虫王子になる。次はたぶんオールスター制覇の時だと思います(笑)
グランプリシリーズ
よーしっ! 太い声があがり、その主を探すと、プロペラ調整室にいた井口佳典だった。室内のモニターを見上げ、熱視線を送る。坂口周のまくり差しが先マイした池田浩二のふところに届いた瞬間のことだ。しかし、2マークで井口は声をあげられなくなってしまう。差して残した深川真二が、2マークを先マイ。決着はついた。そのとき、今度は「佐賀佐賀じゃ!」と嬉しそうな声が聞こえてくる。最終日ということで足を運んでいた選手会長の上瀧和則だ。言わずと知れた佐賀支部の重鎮。かわいい後輩がまずシリーズで優勝を確実にし、グランプリでは最有力なポジションにいる。会長の立場としては、すべての選手を労い、エールを送りたいところだろうが、やはり同支部の後輩に肩入れしてしまって当然。それから上瀧は目を細め、無言で対岸のモニターを見つめていた。
グランプリシリーズを制したのは深川真二だ! 12R1号艇の後輩に最高のかたちでバトンを渡すV。いや、その後輩は先輩の優勝を見て「これは負けられない」と逆にプレッシャーになったそうだが(笑)、展示ピットで戦況を見つめていた後輩に、深川は先頭ゴールの背中をしかと見せつけた。
上瀧会長が喜んだように、上野もまた嬉しそうだったし、九州地区の仲間たちも笑顔で深川を迎えている。ただし、深川自身は微笑みをたたえるのみで、比較的淡々とピットに帰還している。カメラマンたちの前に立たされ優勝者撮影のときも、ガッツポーズをカメラマンに促されるほど。あ、これでいいの? そんな感じで右手をあげた深川は、どこか照れ臭そうでもあり、つまりSG制覇の高揚感はどこにも見当たらないのだった。
かつて深川はBOATBoyのインタビューにこう答えている。「SGだからとか一般戦だからとか関係ない。目の前のレースでとにかく勝ちたい。その思いはどんなレースでも差がない」。つまり、今日勝ったレースはたまたまグランプリシリーズの優勝戦だったのであって、それが一般戦の第1Rでも振る舞いはそうは変わらなかっただろう、ということだ。表彰式では「99回目の優勝」と聞かされ、へえ~、という顔をしていたように、そういうことへのこだわりも興味もない。ただただ、走るレースで勝ちたい、そのために全力を尽くす。深川真二はそういう男だ。
それにしても、SG2Vがともに平和島とは、なんたる好相性。というか、内が決して強いとは言えない水面なのに、内寄り志向の深川が強さを見せつけまくっているのだ。まあ、深川としてはそれも「相性いいっすね」くらいなものなのだろうが、次に平和島に参戦するのがおおいに楽しみである。
ピットに戻った深川に、坂口周がよろめくように抱き着いた。まくり差しが届いたとき、後輩の井口と同様に勝利を予感したはずだ。しかし深川に捌かれ準Vまで。その抱き着き方は、深川さんまいりました、というものに見えた。だからだろうか、深川はすぐに「ごめんねー」と言っている。そこで坂口は、おめでとうございます、と絞り出したわけだが、手の届きかけたSGタイトルをかっさらった男の強さをも思い知っただろう。ともかく、坂口もナイスファイトだった!
最も悔しがったのは池田浩二だ。1号艇だから当たり前ではある。ピットに上がってから、何度首を捻ったことか。深川と挨拶を交わし合いながらも、さらに首を捻っていた。上瀧会長に労われて、池田は「フライングが利いてる!」と大声で吐き捨てた。スタートタイミングはコンマ18。コンマ12の深川にのぞかれたことで、やや強引な先マイとなって差し場を提供した。F持ちだったことが、池田の勝負勘を狂わせたということか。もっとも、池田にとって本当に狙うべきは12Rのほうだ。その後悔を大きな刺激として、2021年は最強戦士の真髄を見せつけてもらいたい。
SGグランプリ・グランプリシリーズ5日目・2nd3日目
・11R
レース直前の菊地孝平は、とにかく考えに考えに考え込んでいた。ピット内を歩いて移動する際にも、うつむき加減で一点を見つめている。時に立ち止まって、彫像のように固まる。展示が終わり、いよいよ出走準備というタイミングでは、緑のカポックと勝負服を身にまとい、待機室前の手すりに突っ伏す格好で、5~10分ほど微動だにしなかった。スタート展示では結局、動いても誰も譲らない枠なりオールスロー。本番も同様の展開が予想される中、勝負駆けを突破する糸口を何とか掴もうと、それは必死でもがいている姿だった。
菊地は最内を差してなんとか3着。しかし、それはファイナル行きを決めるものにはならなかった。12Rの結果次第で可能性は残されていた分、表情はそれほど深刻には見えなかったが、納得できる結末でなかったのは明らかだった。
このレースからファイナル行きを決めたのは、まず寺田祥。2コースから差して2着、23点なったことで当確となった。レース後は淡々としており、また会見でも的確に回答をしていたが、声色が明らかに変わったのは、今村豊さんのことを質問されたときだった。「今村さんのためにも頑張りたい」。寺田はたしかにそう言った。グランプリジャンパーの胸に書かれた今村さんのサイン。それはやはり、寺田にパワーを与え、特別な思いに至らせるものだったのだ。理想としては、白井英治とともに黄金のヘルメット獲りに向かうことだっただろう。先に書いてしまうと、白井は勝負駆けに失敗した。となれば、寺田は白井の思いも背負って優勝戦のピットに入ることになる。それは確実に、寺田の背中を押すものとなるだろう。
もう一人は、逃げ切り連勝の西山貴浩! ニッシーニャがとうとう、グランプリのファイナルに名を刻んだ。徳増秀樹に祝福されて、「人生のピークが来てますわ~」。西山らしい物言いだが、レーサー人生の“キャリアハイ”であることは間違いない。
で、今日の西山も、はしゃいだりおどけたりといったシーンは、人生のピーク発言以外には見当たらなかった。事故レースということもあったのかもしれないが、笑顔らしい笑顔も見せていない。むしろ顔は引き締まっており、もう一段、ギアが入ったようにも見えた。会見では相変わらずコミカルなコメントも発するものの、足の部分に関してや調整に関してなどについては、西山らしからぬ真面目さを発揮していて、それはグランプリのファイナリストらしさに満ちていた。まあ、「峰さんがポルシェなら、僕は軽トラですよ! 差せると思ってるんですか!」みたいなコメントもたくさんあったけどね。それは西山一流のスパイスのようなもので、気合がまるでいつもと違うのは明らかであった。ちなみに、明日も本体を割って、ピストンリングを交換するとのことです。
●12R
トライアルの最終戦とは思えない、静かなレース後だった。逃げ切って勝負駆け成功の新田雄史にも、まるで高揚したところがない。勝利者インタビューのため、エンジン吊りとボート洗浄を仲間に託して足早にピットを後にした時も、表情は一つも変わることがなかった。会見では、足に自信はないが勝ちに行くと力強く宣言しているが、レース後の様子にはそうした雰囲気すら見えていなかったのである。
2着で勝負駆け成功の平本真之にしても同じことだ。何度も何度もしつこく書いているように、喜びも悔しさも、感情を隠そうとしない平本が、エンジン吊りやボート洗浄の間はひたすら淡々としていて、控室に引き上げるときにもほとんど笑顔を見せなかった。まあ、新田と違うだろうと思うのは、3度目のグランプリにしてついに初優出、その喜びに浸っていたという可能性はある。会見でも、これが夢だったと語っているから、その淡々とした感じこそが歓喜の表現だったかもしれない。
3着で勝負駆け成功の松井繁もまた、表情をほとんど変えていない。粛々とエンジン吊りやボート洗浄を終え、顔色ひとつ変えることなく控室へと消えていった。松井にとって、グランプリ優出はもちろん何度も経験したことであり、また到達点ではない。ここに戻ってきたという充実感はあったとしても、それ以上に感情を突き動かすものでもなかろう。
ただ、会見では昨日よりも言葉数が減っていた。やや不機嫌にも見えるほどセンテンスは短く、また顔つきも厳しいものだった。優出が決まり、またたく間に王者モードに入ったと見たが、どうだろう。それこそ、過去に何度か目にした、優出会見の光景なのだ(今回はリモートだけど)。
ちょっとだけ苦笑いが混じったのは進入について聞かれたとき。そりゃあ誰だって、6号艇の松井といえば前付けを想定するわけだが、松井は頑なに「わかりません」と繰り返した。まあ、今日のトライアル2nd2戦とも枠なりオールスローだったわけだし、となるとスロー6コースが勝ち筋になるとは考えにくい。他艇の腹の内もまだ見えないし、ここはその答えしかなかったかも。で、平本も新田も「松井さんがわからないというなら、僕もわかりません」と苦笑いでした。
無事故完走でファイナル1号艇が当確となっていた峰竜太は、まさしく無事故完走の6着。菊地孝平に「お前が勝ってたら、俺が残ってたのに」とからかわれて、「早く言ってくれたらもっと頑張ったのに」と笑い返していたが、まあ本音というわけではなく、他愛のないじゃれ合いであろう。
気になるのは、会見でのテンションが明らかに低かったことだ。昨日はあれだけ「勝って1号艇」など前向きな言葉が並んでいたのに、今日は結局、守りに入ってしまっていたという。致し方ないこととも思えるが、結果が6着だったことも含めて、それが峰の気持ちを落としてしまっているようだった。こんなに意気が上がらない「優勝戦1号艇が決まった選手」、これまでのグランプリで見たことがない。特殊な状況での1号艇ゲットがもたらした、不思議な光景と言えようか。これがどんな影響をもたらすのか、ともかく明日の朝の様子を確認してみたい。
●シリーズ
8Rを勝ち上がったのは深川真二と秦英悟。逃げ切った深川は、出迎えた峰竜太らににこやかに微笑んでおり、気分上々。また、会見では「(グランプリとシリーズ)どちらも佐賀支部が勝てれば最高」と語っている。峰にバトンを渡す役割を果たせるか。
秦はSG初出場初優出! 事故レースではあったものの、井口佳典、久田敏之との混戦を制してのものだけに値千金。初の舞台で冷静に捌いたあたりも見事である。ピットに上がると、とにかくさまざまな選手が嬉しそうに祝福していた。大阪支部はもちろん、他支部の選手もだ。次々に親指を立てられて、秦は嬉しそうにサムアップを返していた。
9Rを勝ち上がったのは坂口周と前本泰和。前本は1号艇で2着と、やや複雑な勝ち上がりで、控室に戻る際、一瞬だけ顔色が変わる場面があった。今日の敗因は、畠山の原稿でも話題になっていた「うねり」で、これでボートが浮いてしまったことを悔しそうに振り返っている。
坂口は、3月の当地クラシックに続くSG優出! あのときは7Rあたりの時間帯にペラを破損。「僕の大黒歴史ですわ」と笑わせた。「明日は陸の上で細心の注意を払います」とも。何しろ、昨日までは伸びに特化させようとしていた調整を、今日は伸びを捨てようとしたら出足が来たどころか結局伸びもさらにアップ。課題だったピット離れの悪さも解消したという。万全で臨む優勝戦だ! 明日は3カドもあるかも!? なお、写真の二人は83期の同期生!
10Rを勝ち上がったのは、池田浩二と石渡鉄兵。石渡は地元勢の砦として、最低限の結果を出したと言える。6号艇ではあるが、まずは安堵といったところだろう。もともとそういうタイプではないが、前付けはないだろうとのこと。6コースからどんな戦略で地元水面を盛り上げてくれるだろうか。
池田は10度目のSG制覇に王手。陸に上がるや、右腕を突き立てて、杉山正樹とハイタッチもしていた。シリーズとはいえ、優勝戦1号艇をゲットしたことは会心であろう。明日は気合を込めて戦うとも宣言。一見クールにも見える男のホットな発言だ。足的にも万全、死角は非常に少ないように思えるがどうだろう。
SGグランプリ・グランプリシリーズ4日目・2nd2日目
●11R
JLCなどで勝利者インタビューを見た方は、西山貴浩はさぞはしゃいでいたと想像されることだろう。しかし実際のところは、レース後はほとんどはしゃぐ姿は見られなかった。まずは一言で言うなら、充実感。あるいは達成感。やるべきことをなんとかやり遂げたという、安堵もあっただろうか。トライアルの1号艇という重圧。そのうえで逃げ切るということ。その大変さを全身で感じる一日だったことだろう。だからその後は、なんども「しんどい」とすれ違う選手に次々と訴えていた。シリーズ組などは、そのしんどさを味わるのは幸せなことだろ、という顔をしていたものだが。
写真は、展示待機に向かう際のものである。カメラ目線で頬を膨らませ、こちらを笑わせているようにも思えるが、そうではない。大きく息を吐き出し、顔をキリリと引き締める直前のものだ。そして「頑張った。今日は頑張った」と自分に言い聞かせるように呟き、スタート練習の写真を見ながら「これを見てコンマ05、良し!」と自分の感覚を声を出して確認し、待機室へと向かった。それは明らかにプレッシャーと戦う姿だったし、そしてきっと打ち克ってみせるだろうと確信できるような力強い姿でもあった。
「また強くなっちゃいましたね、僕」とレース後に言った西山。この1号艇を勝ったのはたしかに彼をひとつ成長させたはずだ。そして明日も1号艇! ファイナル行きを懸けての絶好枠番。今日白カポックを経験したとはいえ、また違った緊張感があるだろう。他選手からのプレッシャーもキツくなるし。最終日の12Rに名を連ねることができるか、西山はまた新たな挑みを経験する。
2着になった松井繁は、カポック脱ぎ場で装備をほどきながら、新田雄史と笑い合っている。2号艇2コースの新田は1マーク、意表を突くジカまくり。攻めようとした松井は差しにチェンジすることを強いられ、そのハンドルは一瞬遅れている。そのあたりを振り返り合っていたのだろう。なにしろ、松井は「想定していなかった」とはっきり認めている。自分が攻めるものと決めつけて、その部分での冷静さに欠いていたとも。だから、新田にしてやられたという点も含めて、笑い合うことになったのだろう。それでも、2着で明日につないだことで、気分は悪くないはずだ。その後には報道陣の質問に応えながら笑顔も見せていて、精神的にもいい状態で勝負の3戦目に臨むことになりそうだ。
対照的に、毒島誠が表情をなくしていた。6着大敗。その事実を受け止められないというか、あるいは仕上がりが想像と違っていて、それが信じられないというか。明らかにテンションは急降下し、悄然とした様子となっていたのである。12Rのエンジン吊りに出てきたときにも、まだ引きずっているような感じが見えていて、ちょっと心配だ。しかも明日は6号艇を引いてしまった。今日のところは意気上がらぬのも致し方ないところか。明日は開き直って、調整もレースも(進入も)大胆な手に出てくることを期待したい。
●12R
吉川元浩が痛い痛い転覆。伸びてきた白井英治を制して先攻めに出たが、1マークの出口で振り込んでしまった。選手責任の減点がとられて、実質上、吉川のグランプリは終戦を迎えてしまった。幸いにも体は無事だが、今日は眠れぬ夜となってしまうかもしれない。
攻め遅れ、さらに吉川を避けるかたちになった白井は5着。ただ今日は珍しく、ヘルメットの奥の目が細くなっていて、脱いだら苦笑いが出てきたのであった。事故艇を回避するというアクシデントがあったのだから、大敗も仕方ないというところだろうか。本来なら、これで一歩後退、明日の勝負駆けが厳しくなったのだから、深刻になってもおかしくないが、今日はそれを考えても仕方ないということだろう。とにかく明日の巻き返し。トライアル1stで1着を獲っている2号艇を引き当て、意気揚々と3戦目に臨むはずだ。
篠崎仁志も、明日は厳しい勝負駆けを戦うことになってしまった。ボーダー21点とすれば1着勝負。今日の4着はそれなりの痛みを伴うものだ。エンジン吊りを終えた仁志は、おもむろに左膝を交差するように上にあげ、さらに右ひざを同じようにあげた。それはまるでレース前のストレッチにも見えるもので、なぜこのタイミングでこの仕草が出たのかは見当がつかない。初戦5着、2戦目4着と振るわない結果に、その悔しさを紛らすものだったのだろうか。
菊地孝平は6号艇2着で、これは大きい9ポイントとなった。2戦連続の6号艇、枠なり6コースだった初戦なのだから、今日は前付け必至かと思ったら、動く気配なしの枠なり6コース。スタート展示を見たときは少々意外に思ったものだった。だが、とびきり聡明な菊地のこと、伸びる白井をマークしての差しという戦略を思い描いていた? エンジン吊りを終え、カメラの放列を前にしてキリリとした表情を見せていた菊地は、その場を通り過ぎると、立ち止まってニヤリと笑った。僕にはそれが、してやったりの笑顔、と見えたのだが。で、明日もまた6号艇! 最初に引いた西山が1号艇を引いて派手なガッツポーズを見せた後に、3戦連続の緑玉。菊地は西山に倣って(?)ヤケクソのような派手なガッツポーズを見せたのだった(笑)。そしてその後は「このヤロ」という言葉を何度も呟いていて、すべてテレビカメラがそれを拾ってました(笑)。そりゃこのヤロ、だよなあ、オールグリーンだもの。
さて、既報の通り、勝った峰竜太は3走目を無事故完走すれば、ファイナル1号艇が当確となった。無事故完走でファイナル行き当確、ではない。ファイナルの白カポックが当確なのだ。こんなグランプリ、初めて見たよ。今日は初戦で好着順の選手(主に2nd組)が大敗を喫し、逆に初戦で舟券に絡めなかった選手(主に1st組)が好成績、それによって具体的に言えば2走14点、13点あたりにずらーっと並ぶかたちになったのである。対する峰は6着=4点でも24点。2位タイの14点組は勝っても24点。同得点の場合は上位着の数が多いほうが優先され(西山と毒島が勝てば峰の2勝に並ぶが、それ以外なら1勝で峰が上)、上位着の数が同じなら選出順位が優先されるので選出1位の峰が上。つまり、誰が勝っても峰を超えることが不可能というわけである。
それを報道陣に伝えられた峰は、「いや、違う、そんなに甘くない」とわりと強い語調で訴えている。いやいや、違ってはいないのだが、この舞台では何があるかわからないと言いたいのだろう(実際、吉川の転覆があったばかりだ)。さらに、「6着で1号艇より、明日も勝って1号艇となりたい」と前向きな言葉も口にしている。調子に乗らない峰竜太というのが果たしていいのかどうかはむしろわからないが(笑)、しかし普通に考えれば明らかに好材料であろう。緩むことなく、明日も勝利を目指す。結局はそれがVへの近道のはずだ。
まあ、「5コースから勝ちたい」と決めつけてるあたりが気がかりですけどね(笑)。たしかに5号艇だけど、6号艇は毒島誠、バナレ飛ぶかもよー。前付けの可能性もあるし。そのへん、もろもろ想定することができれば、結果はどうあれ、いい戦いができるだろう。
●シリーズ
予選トップは池田浩二。8R、6号艇2着でかなり有利な立場になった。10R石渡鉄兵が1着なら逆転だが、なにしろこちらも6号艇。実質的に、6号艇を2着でクリアしたことでトップをもぎ取ったと言えるだろう。10Rが終わったあと、さまざまな選手に祝福を受けていた池田。まあ、本来はもういっちょ上の舞台に立つべき選手なので、池田も微笑みを返すぐらいなのであった。ともあれ、10回目のSG制覇がぐっと近づいた。
勝負駆けでは、10Rの前田将太がアツかった。その時点で6・00ではあったのだが、ボーダーを挟んでここに何人か並んでいたのだ。前田は19位、木下翔太も同じく6・00でさらにその下の20位だった。6・00なら3着勝負、というのが通常だが、3着では順位を上げることができない。2着以上が求められるところだったのだ。
レースは、守田俊介の前付けを入れての3コース。深い2コースではなく、こちらを選んだのは勝負手だったと思うのだが、残念ながら実らず。大敗で予選落ちとなってしまった。ピットにあがり、ヘルメットを脱いだ前田の顔は露骨にガッカリ。そこには悔しさばかりが貼りついているのだった。前田は地元福岡で開催されるクラシックの権利がなく、シリーズVが欲しかったはず。その道が閉ざされたこともまたショックだっただろう。そちらは年明けの地区選で頑張るとして、まずは残り2日、意地を見せてもらいたい
勝負駆けの1~10Rが終わり、GPシリーズ戦の準優18PITが確定しました。予選トップで10R1号艇を勝ち獲ったのは、とこなめのスーパースター池田浩二! 明日から逃げ~逃げを決めれば、SGタイトルがついに2桁の大台に乗ります。深川真二とトライアル組の前本泰和も1号艇をGETしています。
GPシリーズ準優勝戦
8R
①深川真二(佐賀)
②秦 英悟(大阪)
③茅原悠紀(岡山)
④村田修次(東京)
⑤久田敏之(群馬)
⑥井口佳典(三重)
9R
①前本泰和(広島)
②坂口 周(三重)
③上野真之介(佐賀)
④磯部 誠(愛知)
⑤長田頼宗(東京)
⑥守田俊介(滋賀)
10R
①池田浩二(愛知)
②石渡鉄兵(東京)
③馬場貴也(滋賀)
④徳増秀樹(静岡)
⑤桑原 悠(長崎)
⑥山口 剛(広島)
SGグランプリ・グランプリシリーズ3日目・2nd初日
●11R
スイッチが入った時の菊地孝平が見せる思索モード。レース前の菊地は、まさにその状態に入っていた。写真がそれだ。こうなると声もかけられないし、おそらくこちらのシャッター音も耳に入っていない。10R直前、展示待機室の外でも、菊地は緑の勝負服をまとって手すりに突っ伏すようなかたちで固まっていた。調整の方向性を模索すべく、あるいは勝ち筋を探すべく、菊地は全身全霊で脳みその回転を上げまくるのだ。
しかし、それもむなしく6着大敗。レース後の菊地の表情は深刻そのものだった。悔恨でもない。落胆でもない。ひたすら衝撃に耐えているかのような、うつろともいえる顔つき。あと2走でどう立て直すのか、菊地の思索はまだまだ続く。
昨日一昨日と喜びをあらわにしていた平本真之は、今日は悔しさをあらわにする一日となった。畠山の予想記事にあるように、平本は試運転で転覆している。足落ちがあったのかなかったのか、ともかく2nd発進組には及ばなかった。すべてを含めて、不本意な2nd初戦となってしまったわけだ。
そう、11Rは2nd発進組が上位独占。毒島誠が快勝し、吉川元浩が2着。寺田祥が3着と①-②-③決着。磯部誠が「クロちゃん、どれだけ頭を絞っても、モーターボートは結局①-②-③」と笑っていたが(僕がド人気の組み合わせを買っているわけないと見透かしてたな・笑)、さらにグランプリは2nd発進組が絶対的に有利という象徴のようにも見えたのだった(磯部と口を揃えて出た言葉が「おもんない」。磯部、そう言うなら明日の4号艇で穴を出せ!)。
上位3人はいずれも淡々とした様子で、寺田祥が微笑を浮かべていたのが目立った程度。もっともその微笑の口元に、小さい悔恨が宿ってはいたが。むしろ毒島誠があまりにも淡々としていたことがかえって気になったりもした。初戦を勝利でクリアしたことは、1号艇であったとはいえ、プレッシャーを解き放つ材料のはずなのだが。
●12R
なにしろ、峰竜太はカポックを脱ぎながら、「よかった~~~~」とため息をついたのである。それが、特に初戦1号艇の本音中の本音だと思うから、毒島の様子に違和感を覚えたのだ。峰はレース直後も毒島とは対照的にニコニコしていて、テレビカメラにガッツポーズを見せたりもしている。ただし、そのとき目線がカメラから微妙にズレていて、会心のガッツポーズには見えなかったのである。その直後に出たのが「よかった~~~~」。
2年前だったか3年前だったか、やはり2nd1号艇発進だった峰が、逃げ切ってから少し時間が経ったあと、「緊張した~~~~~。勝ててよかった~~~」とやはりため息交じりに話しかけてきたことがあった。それはまるで優勝戦とか準優勝戦の、ここ一番の1号艇のような装いだったので、まだ初戦なのにと峰に返した。しかし、初戦だからこそ、なのだ。そのときは足も仕上がり途上で、それがまた緊張感を増幅したという。万全ではない状態で負けられない1号艇、というのは、単なる1号艇ではないのだろう。峰は枠番抽選でふたたび1号艇を引き当て、リモート会見ではかなりゴキゲンの様子だったわけだが、それでも今日の本音はやっぱり「よかった~~」のため息だったのだと思う。毒島も同じだと思うのだが……。
2着は深谷知博。初のグランプリを上々の成績で切り抜けてみせた。レース後の深谷からは、笑顔がこぼれまくっていた。それは実に自然体の笑顔にも見えていた。実際、自分がどういう状態になるのだろうかと考えながら、レースになればいつも通りに戦えたという。もしかしたら、深谷のメンタルはかなり強いのかもしれない。あるいは……グランプリの特殊性やプレッシャーにまだ気づけていないとするなら……というのは、こちらの考えすぎですかね。明日は6号艇を引いた。それなりの着順で3戦目に向かえるとなると、メンタルの強さはますますアドバンテージになるはずなのだが、果たして。
それにしても、白井英治の足がかなり良さそうである。畠山の鑑定がどうかは聞いていないが、トライアル2戦のレースぶりからは、12人のなかで一番ではないかと見えた。事実、西山貴浩がレース後、目を丸くしていたのである。スリット隊形では白井コンマ03、西山コンマ07も、1マークまでに白井がぐいぐい前に出て行った。西山は、その様子を両手をボートに見立てて表現。つまり、白井が出ていって自分が下がったと、左手をぐーんと前に出したのであった。その隊形だったから、「ぜんぜん握れなかった」と嘆くわけで、西山は展開がまるでなしの6着である。あの西山がまったくおどけることなく、ただただ足の違いに呆然としていたのだから、衝撃的だったのだろう。
白井は3着で、例によって眉間にシワを寄せて苦み走った顔つき。勝っても負けてもこれだから、その様子からは心中を察することは難しい。ただ、3コースが先攻めしやすい今のボートは、出切れなかったときの伸びる4コースって、難しいですよね。結局待って差して届かずになりやすいから。そのあたりの悔しさはあったのではないかと推測する。
●枠番抽選
密回避ということで、今節は会場に立ち入れないのであります。トライアル1st第2戦の抽選も同様でした。というわけで、テレビ越しに聞こえてきた「えぐいわー」という松井繁の声だけお伝えしておきます。5番手の抽選になった松井、順番が回ってきたときに残っていたのは白と赤である。2分の1で白!……………を引けないという(笑)。白を引く王者、本当に見られないなー。松井の嘆きは、ようするに「えぐい抽選運の悪さ」ということでしょうね。赤いカポックでの快ショットを期待します!
●シリーズ
別記事の通り、秦英悟がSG初1着! レース後、秦自身も笑顔だったが、周囲の仲間たちが嬉しそうだったのが印象深い。松井をはじめとする大阪勢、同期の桐生順平、また期の近い篠崎仁志や守屋美穂も笑顔で祝福していたのだ。苦節ン十年とまではいかないが、秦の努力を見てきた仲間たちは、デビュー13年での初SG、そして勝利に感慨があったということだろうと思う。この勝利で準優圏内に突入している秦。さらに予選突破へと駆け上がりたい。
10Rのシリーズ復活戦は茅原悠紀が逃げ切り。昨日までは険しい顔も目立っていたが、ようやく笑顔が見られたのだった。今日は前半6着で、どうにもリズムに乗り切れなかったわけだが、この勝利を転換点にできるはず。平和島グランプリは、それがシリーズであっても、茅原悠紀がヒーロー! そんな走りをあと3日見せてほしいぞ
西山貴浩
SGグランプリ・グランプリシリーズ2日目・1st2日目
西山貴浩が11Rまくり快勝! 初出場のグランプリで、自力でトライアル2nd進出を決めてみせた。賞金ランク17位からのいわば下剋上だから、お見事の一言だ。
今日もやはり普段以上に緊張感が見えていた西山だが、レース後はいつものニッシーニャ! 凱旋しボート上から仲間に向けてガッツポーズを決めると、ボートを降りてからは笑顔満開。“相方”の池田浩二も嬉しそうで、西山と戯れたばかりか、カメラマンの前では頭を小突くというか締めるというか、そんなポーズであらわれたりした。西山ももちろん、それに応えて、顔を作っている。エンターテイナーぶりがあらわになったのだ。
着替えを終えた西山は、遠くにこちらの姿を見つけて、ド派手に右手を高く掲げて「イェーイッ!」。実は前節の若松でグランプリについて少し話す機会があり、軽くハッパをかけてもいたから、西山のその笑顔がなんだか嬉しかった。西山行きつけの居酒屋「勢人」のお父さんとお母さんも喜んでいるに違いない。ニッシーニャ、本番はここからだぞ!
このレース、白井英治が3着で2nd行き当確を出した。まあ、いつも通りに険しい顔つきのレース後ではあったが、印象的だったのは徳増秀樹を気遣っていたことだ。レース直後もそうだったし、12R発売中に徳増がペラをチェックしているときにも、白井は徳増に話しかけ続けていた。
徳増はまさかの6着6着で終戦。レース後はさすがに気落ちした様子が見られた。白井に対し「今日はやり尽くした」とは返していたが、結果は納得のいくものではないだろう。そんな徳増に配慮を見せた白井は、なんだか大きく見えたのだった(実際、背は高いけど)。
菊地孝平が道中競り負けての5着。これで得点は20点となり、2nd行きは12Rの結果に委ねられることとなった。ただ、レース後はやや呆然とした様子もありはしたのだが、着替えを終えるとすでに前向きになっている。「たぶん僕は大丈夫」と、自分に言い聞かせているわけでもなさそうに、強気に言い切ってみたり。そして、本当に2nd行きが決まったのだから、感じるものがあったのだろうか。ちなみに、今節はスローからのスタートしかしておらず(スタート特訓でも)、ダッシュはまったくわからないとのこと。6号艇の明日は枠なりならダッシュスタートになりそうだが、果たして。まあ、この人のことだから、明日は特訓でしっかり掴んできそうだけれども。
11R2着で、菊地と同得点に並んだ新田雄史も、結果的に2nd行きと相成った。選考順位が菊地より下なので微妙なところではあったが、まずは胸を撫でおろすこととなった。レース後は笑顔も見えていた新田は、6号艇の明日は「枠なりで行きます」と言い切っている。6コースからの戦略がどんなものになるか。明日は整備、調整の様子も気になるところだ。
12Rは平本真之が逃げ切って、トライアル1st連勝。文句なしの2nd進出だ。今日もゴキゲンのレース後で、イン逃げということもあってか、昨日のようなガッツポーズは出なかったものの、笑顔を振りまいて喜びを表現している。この勢いで2ndも快進撃……とはなかなかいかないのがグランプリの怖さ。6年前の平和島大会でも毒島誠が1st連勝で2ndに臨んだものの、まるで人が変わったかのように精彩を欠いてファイナル行きを逃している。ここからどう切り替えて臨めるかが、平本にとってもポイントとなろう。
もうひとりの2nd行きは、12R2着の松井繁。リフトに乗り込む前、松井は、出迎えた仲間に向かって右手で拳を作って見せている。やはり1st発進だった5年前、松井はまさかのシリーズ回りを喫している。また3年前も1st発進で、こちらは2着3着で勝ち上がり。このシステムの悲喜をどちらも味わった王者は、その2着の意味をがっつりと知っていたということだ。ちなみに1stから2ndに進んだ3年前は、ファイナル行きを逃している。それをふまえて、今回の2ndをどう戦っていくのかは見ものである。
12Rでは、ピットに一瞬、緊張が走った。2周1マーク、先マイを仕掛けた岡崎恭裕に瓜生正義の舳先をめくるようなかたちになり、瓜生が転覆。岡崎もそれに乗り上げて転覆している。特に乗り上げられた瓜生が危険な転び方に見えたので、「瓜生さん、大丈夫……」という声も選手から聞こえてきている。やがて、「両選手、異常なし」のアナウンスが流れると、一気に空気が変わった。誰もが安堵し、息をつき、顔つきが柔らかくなっていた。
無事で何よりではあったが、瓜生も岡崎もこれで敗退が決定。岡崎は不良航法もとられている。レスキューからあがってきた二人は自力で控室に戻ったが、岡崎は思い切り顔を歪めてもいた。それは、1st敗退の痛恨か、それともどこか痛めたのか、判然とできない表情で、先輩を巻き込んでしまったことも含めて、多くの意味であまりにも痛い転覆だったのはたしかだ。
せっかく引き当てた1号艇を活かせなかった前本泰和のレース後は、大きな脱力感が伝わってくるものだった。表情に内心を強くあらわさないのはいつものことでも、やはりチャンスが水泡に帰す結果となってしまったことに、悔恨を感じていたに違いない。前本は前回も1st敗退。2度つづけてのシリーズ回りとなってしまった。来年こそ、リベンジを果たしたい。
井口佳典もまた、脱力感を発散させた一人だ。呆然、とも見えた。グランプリ出場は、このクラスの選手の当たり前の目標。それを果たしつつ、しかし途中で離脱しなければならないのは、屈辱だし、信じがたい事態であるのは間違いない。前本や井口の様子は、まさにそれを表現しているのだし、またグランプリという舞台の、とりわけトライアル1stの過酷さ、苛烈さの象徴でもある。
前回の平和島大会の覇者、茅原悠紀も今回はシリーズに合流することになった。前回も1stスタートで、このシステムになってから唯一の2nd組以外から出た優勝者。その再現を果たしたいところだったが、かなわなかった。昨日は苛立ちが伝わってくるレース後だったが、今日は静かなレース後だった。それはやはり、脱力と捉えるべきだろうか。トライアル1stの着順点は高く、それをシリーズにも持ち越すので、茅原はシリーズでは現時点で得点率2位となっている。これを活かして、今回はシリーズ制覇で目立ってほしい。
シリーズでは、やはり石渡鉄兵の無傷3連勝がピットを賑わした。先頭を走った瞬間、「鉄兵さん3連勝」と囁かれていたし、レース後もいろいろな選手が石渡に声をかけ、称えている。1st組が合流する3日目以降も、主役の座を渡したくはないところ。
その石渡に敗れた1号艇・原田幸哉の表情がやはり冴えない。初日が6着、今日の前半が5着と、まさにゴンロク。巻き返しに絶好の1号艇を活かせなかったのは、やはり痛恨だ。原田は出迎えた柳沢一のもとに歩み寄り、師弟による“反省会”が長く続いた。愛弟子の言葉から、反撃のヒントは見つけられただろうか。
SG初出場の塩田北斗はここまで6着2本。機力的に相当厳しいのだろう、昨日も今日も、遅い時間帯まで試運転をし、さらに調整を続けている。兄貴分とも言えるニッシーニャは2nd行きを決めた。刺激を受けて、明日からおおいに目立つ走りを見せてもらいたい。(黒須田)
さあ、トライアル2nd。昨日と今日、スタート練習が行なわれています。今日のスリット写真を一緒に見る明日の12R1~3号艇。
西山貴浩
SGグランプリ・グランプリシリーズ初日・1st初日
推定ボーダー20点での勝負駆け条件も添付しておきます。
トライアル1st第2戦
11R
①前本泰和(広島)9点 ③着
②菊地孝平(静岡)12点 ⑤着
③西山貴浩(福岡)11点 ④着
④徳増秀樹(静岡)7点 ①着
⑤新田雄史(三重)8点 ②着
⑥白井英治(山口)14点 当確
12R
①平本真之(愛知)14点 当確
②瓜生正義(福岡)9点 ③着
③松井 繁(大阪)11点 ④着
④茅原悠紀(岡山)7点 ①着
⑤岡崎恭裕(福岡)12点 ⑤着
⑥井口佳典(三重)8点 ②着
瓜生正義が眉間にしわを寄せて、口を楕円に開いた。やっちまった。そんな心の声が聞こえてくるようだ。たった2戦のトライアル1st。1着を獲ればほぼ2nd行き当確というなか、1号艇は大きなアドバンテージである。この大事な一戦を、1マークで差されたのはともかく、その後競り負けて4着にまで後退したのだから、さすがの瓜生も悔しさを隠せない。他の選手と礼を交わす際には明るく振舞ってはいたけれども、感じているショックはかなり大きいはずだった。
かといって、その瓜生を1マークで差し切った白井英治も、決して相好を崩そうとはしない。いつものようにヘルメットを脱げば、やはり眉間にしわを寄せた渋い顔が浮かんでくるのであり、ただしこれは気を緩めることなく振舞っているもののようには見えていた。12R発売中、だんだんと空が暗さを増す中、白井はボートを磨き上げ始めた。これは白井のルーティンでもあり、不思議な光景ではない。そのとき、モーター格納を終えた瓜生が歩み寄った。白井は瓜生にとびきりの笑顔を見せて、お互いの激闘を労い合うのだった。ホッとした瞬間だったかも。
岡崎恭裕、西山貴浩が瓜生を競り落として2着、3着を奪った。二人とも外枠での好着順、これはデカい。岡崎は前検から機力に手応えを感じていて、今日の競り合いのなかで再確認したようだ。仲間に囲まれた際の雰囲気は、2着ではあるものの、満足気なのであった。
西山のほうは、まさに安堵といった雰囲気。レース直前、いつものレース前よりカタい表情をしていた西山。やはりグランプリを走ることへの緊張感が全身に降りかかったことだろう。それでも強気に前付けし、瓜生先輩との競り合いにも一歩も引かず、3着をもぎ取った。それは好着順であったことと同時に、この舞台でしっかり戦い切った安堵のようにも見えた。
大敗の新田雄史、茅原悠紀は、やはり冴えない表情であがってきた。いや、茅原は明らかに不機嫌に見えた。自分に対する憤りだろうか。コースは自ら引いて6コース単騎を選択した。そのことが、レース後の茅原にはどう捉えられたことだろう。やはり主張すればよかった、だったのか。それよりも1マークでキャビるような格好になったことに対する悔恨か。とにかく、茅原はおそらく自分への腹立ちを抱えながら、それにじっと耐えているように思えた。
●12R
9R後に、徳増秀樹が長田頼宗と話し込んでいる姿があった。徳増が長田に水面のことを尋ねていたようで、地元である長田から平和島の特徴を教わろうということだったのだろう。12R発走の際、「1マーク付近にうねりが残っている」というアナウンスがかかっている。潮の干満により水位が変わり、満潮に向かうときは1マークの奥から潮が流れ込んでくる。今日の満潮はまさに12Rの頃。平和島はなかなかの難水面なのだ。走り慣れた地元勢から少しでも情報を得ておきたかっただろう。
それがどこまでの効果をもたらしたのか。徳増は痛い大敗。うねりの影響かどうかは何とも言い難いが、2号艇の初戦をクリアできなかった。このうねりについては、菊地孝平のイン戦には影響をもたらしたようだ。アナウンスを聞いていた菊地は、しかし1マークではうねりを確認できず、とはいえ警戒は解けずに、少しターンマークに寄ったターンをしてしまった、というのだ。それは、うねりで失敗しないための安全策だった、と。結果、ふところがやや開くことになり、そこを平本真之に突かれた。過酷なトライアルであるうえに、こうした水面状況とも戦わねばならないのだ。もっとも菊地は敗因を認識しており、同時に機力には好感触を得ているようであった。
平本真之は3コースからまくり差しを突き刺した。昨年のトライアル1st初戦は6号艇6コースからの勝利だった。今年は3コースまくり差しだ。何度も書いているように、平本は喜びも悔しさも隠さない。今日もそうだ。いや、今日はとびきり、喜びを爆発させてみせた。みよ、このガッツポーズ! 待ち構えるカメラの放列に向けてのサービスカット。超ゴキゲンであり、そのゴキゲンを全身で表現したわけである。
松井繁、井口佳典、前本泰和は比較的淡々とはしていたが、3着とまずまずの着順に「こんなもんだろ」とばかりに自然体を見せた王者の姿はなかなか印象的。また、井口はヘルメットの奥では目つきが険しくなっていた。明日の勝負駆け、その目つきは恐ろしさを感じるほど鋭くなるものと思われる。
トライアル2nd組は、一日たっぷり調整をして、初戦11R組(毒島誠、吉川元浩、寺田祥)が11R発売中、12R組(峰竜太、篠崎仁志、深谷知博)が12R発売中にスタート練習を行なった。その後はいずれもボートを引き上げているが、毒島と深谷はさらにプロペラを叩いていた。毒島はけっこう強く叩いていて、叩き変えているという雰囲気も感じる。深谷も時に力強い打突音を響かせていた。
で、寺田祥は他の5人に比べて余裕の過ごし方をしているように見えたのである。ピットを離れている時間も短くはないので、すべての時間帯を確認できているわけではないが、僕が見ている間は圧倒的に、喫煙所で他の選手と談笑している姿が多かったのである。これが何を意味するのか。そして、明日のテラショーの動きは?
シリーズ組。とにかく印象に残ったのは、9R発売中に魚谷智之がボートを水面に下ろしたことだ。7Rで上平真二の転覆に巻き込まれ(妨害失格)、魚谷も転覆を喫しており、その後は転覆整備をしたものと思われる。7Rから9Rはほとんど時間がなかったにもかかわらず、整備を終え、その感触を確かめるべく水面に飛び出したのだ。その懸命な姿勢には打たれるものがあった。
9R、丸野一樹が1着。湯川浩司に競り勝ったものだった。前半が6着だったので、巻き返しに成功した格好だ。11R発売中、装着場を歩く丸野と目が合う。丸野の目がにーっと細くなり、右手の親指が力強く立てられた。やったね! 明日は師匠・吉川昭男との直接対決(吉川1号艇、丸野3号艇)。深川真二が6号艇だから、内は深くなるぞー。師匠をまくれ!
西山貴浩
前検日
【トライアル2nd】
17号(46%)A+=吉川元浩
37号(44%)A+=峰 竜太
67号(44%)A+=毒島 誠
60号(44%)A=深谷知博
33号(46%)A?=寺田 祥
39号(45%)B+=篠崎仁志
【トライアル1st】
22号(44%)S=岡崎恭裕
65号(43%)A+=茅原悠紀
14号(43%)A+=井口佳典
56号(41%)A+=菊地孝平
79号(43%)A=新田雄史
19号(43%)B+=西山貴浩
59号(44%)B+=徳増秀樹
54号(39%)B+=瓜生正義
【GPシリーズ】
25号(37%)S=山口 剛
34号(35%)A?=須藤博倫
68号(36%)B+=上野真之介
58号(39%)B+=秦 英悟
66号(34%)B+=杉山正樹
11号(38%)B+=永井彪也
69号(33%)B+=佐藤 翼
この人がついにグランプリ戦士として登場! 西山貴浩であります。髪の毛の色、変わってますかね? これも気合の証しと捉えましょう。今節のニッシーニャは一味違うかも!?
【トライアル1st組】
このグループは明日の11R・12Rと同じメンバーでの特訓だったので、並びと足色の気配を記しておきます。
★11R(①瓜生②白井③新田④茅原⑤岡崎⑥西山)
一本目=123/456
※機力的に岡崎恭裕、茅原悠紀あたりに期待していたらば、白井英治の2コースからの出足~行き足がやたらと目立って見えた。イン瓜生と同体からスーッと1/3ほど覗く感じ。外からはアウトの西山貴浩が珍しくちょこっと出て行くムード。
二本目=1234/56
※茅原がスローも穏やかな枠なり4対2。ここでも白井の行き足が出色で、半艇身先行した瓜生にスーーッと追いついていく感じ。でもって、ここも西山がアウトからちょこっと伸びた。
三本目=1265/34
※おお、西山がガツンと攻めてひとりだけ極端に深い70起こし!!(他のスロー勢は100) 西山はドカッと踏み遅れたが、明日もこれくらいの気合でピットアウトから攻めてもらいたいものだ(せめてスタート展示だけでもw)。で、ここでも出足系統で目を惹いたのは白井であった。うむむ。
補足事項としては、「白井の出足~行き足が◎」の見立てが正しければ、足合わせでぴったり互角だった寺田祥も◎という算式が成立するのだがどうか。私と三島敬一郎が期待する茅原65号機はあまり目立たなかったが、このモーターは実戦でこそ映える抜群レース足だと思っているので、現状ではまったく心配していない。
★12R(①菊地②徳増③平本④松井⑤井口⑥前本)
一本目=123/456
※5コース井口がスリット前後で抜けていくムード。スタート練習では珍しく、他艇の起こし~スタートが遅れ加減だったせいでもある。
二本目=142/356
※松井繁の前付けでスローは100を切る起こし。菊地孝平のスタートの切れの良さ(コンマ07)とそこからの行き足がいい感じ。ここも井口がスリット突出したが、明らかな早起こしだった(フライング)。
三本目=136・5/24
※前本がゴリゴリ攻めてのスロー90起こしから、菊地が絶品スタート&ゴキゲンな伸び返し。外からはやっぱり井口が気合満点の起こしからスリットで覗く気配ではあった(フライング)。
補足事項としては、菊地×井口の足合わせでターン回り~出口は菊地が強く、そこからは互角かやや井口。1号艇の菊地はパワー的にもスタート勘的にも、イン戦での不安が感じられなかった。ただ、⑥前本と④松井の動き次第では、過酷な進入隊形を強いられるレースではある。
SGグランプリ・SGグランプリシリーズとは?レギュレーション
SGグランプリは、獲得賞金額上位18名によって行われる、優勝賞金1億円を賭けたボートレース界最高峰のSG競走である。 出場資格は、当該年1月1日~SGチャレンジカップ及びGIIレディースチャレンジカップ終了日までの獲得賞金額上位18名。
優勝賞金・他各レースの賞金
SGグランプリ出場選手
ボートレース平和島の注目モーター
ボートレース平和島で毎レース展示航走時に公開される「1周」「まわり足」「直線」の3種類のオリジナル展示タイムを予想に活かすコツをアドバイス!
2020年1月から10月末までのオリジナル展示を集計し、各タイムで1位~3位になった選手は実際に何着だったのかという割合も算出しました。
ぜひ、グランプリでのレース予想の参考にオリジナル展示タイムを活用してください!
展示を読み解いて的中率アップを目指そう!
スタート展示では直線の良し悪しが分かる。スタートラインまで並走する2選手がいても、その後どちらが抜け出すのか、そこを判断出来れば、本番どの選手が攻めていけそうなのかがある程度見えてくるだろう。1度で見切れなくても、スマホやPCがあれば展示リプレイを何度でも見返せる。1号艇と2号艇の比較、2号艇と3号艇の比較と巻き戻す度に確認すれば、自ずとそのレースに出走する全選手の比較が分かってくる。
次は周回展示。ここでターンの確認が出来る。それぞれの比較は難しいにしろ、スピードを殺さずターンが出来ているか、ハンドルを切ってしっかりとボートが向いているか、向いてからの加速がスムーズかの3点を見れば、1マークで誰がどう攻めるかという判断材料となる。
展示内容が良いのに人気薄な選手がいれば、万穴券獲得のチャンスと言えよう。
さらに「オリジナル展示タイム」でより予想を強固なものにしたい。1周タイム・まわり足タイム・直線タイムと3つに分類されるが、1周タイムとまわり足タイムにおいては上位であればあるほど、舟券に絡み、特に1着が多いことが上記の過去レースの集計結果で分かる。展示航走を見ただけでは判断出来ないときでも、オリジナル展示タイムを見ればどの選手が良かったのかが分かり、その選手を中心に舟券を購入すれば集計データ通りに的中率も上がってくるはずだ。長年ボートレースを見てきたファンで、予想が難しいレースがあっても、このタイムを参考にすれば自ずと軸が見えてきたり、思わぬ高配当が的中したりするのも1つの魅力である。
12月のボートレース平和島の特徴
向い風に抑えられているスロー勢を、
ダッシュ勢が一気に潰す!
平和島は風水面だ。南風が吹く夏はホーム追い風が吹き、北風が吹く冬場はホーム向い風が吹く。レースが荒れて万穴がポンポンと飛び出すのは、向い風が吹く冬だ。
向い風の抵抗を受けるスロー勢のダッシュが乗る前に、目いっぱいダッシュを乗せた4カドの選手がスリットで先行。水面が狭く、逃げ場がない平和島では、スリットでフタをされると何もできなくなる。4号艇が一気に捲って4=5、4=6の舟券ができ上がる。SGはインの舟券が主体になるが、今年3月のクラシック準優では1号艇がまさかの全敗。平和島ではボートレースの常識が通用しないことを頭に入れて欲しい。向い風が5m以上吹いたときは勇気を持って“インを消す”こと、それが舟券攻略作戦だ!
一番大事なモーター相場は戦国模様だ。勝率上位ベスト6にSランクはなく、7位~18位の中にSランクの“お宝”モーターが眠っている。イン天国の住之江ならごまかしが利くが、パワー優先の平和島では捲られてしまう。2014年(茅原悠紀がV)と同様に、今回も賞金7位以下からの下克上Vがありそうな気がする。
最後に近況急上昇中のモーターを紹介しよう。25は周年Vから劇的に上昇し、とにかく伸びる。16はスリットの伸びが際立つ。40は10月末に長田頼宗がセット交換してから上位級をキープ。32も中間整備のギアケース交換で一変した。この4基は決定戦に出場しても活躍必至。特に25は今が旬で、シリーズなら頭ひとつ抜けたエース級の動きをするはずだ!
使用モーター一覧
推奨モーター21基
25号(37%)S 行き足~伸びの繋がりが強力で後伸びも。S全集中
22号(44%)S ゾーンが広く出足型or伸び型にも仕上がりパワフル
65号(43%)A+ 中間整備から見違える出足・回り足。1億へ最短!?
14号(43%)A+ 伸びは中堅上位も出足と回り足の掛かりは抜群級!
37号(44%)A+ スローでダッシュで出ていく直線系抜群機!
17号(46%)A+ 出足・回り足の加速感は上位級で、SGクラス向き!
56号(41%)A+ 近況乗り手悪く不安も出足・出口押し・伸びと良機
67号(44%)A+ 秋口から上向きで、伸び・出足・回り足と良化中!
60号(44%)A パンチは無いが全体的に上位級の足。整備調整次第
79号(43%)A 出足勝負ならうってつけのモーター。出足番長だ!
33号(46%)A? 夏場は出足・伸び抜群だったが。近況は中堅域に?
34号(35%)A? 伸び足抜群機。伸び仕様に仕上げる選手が引けば◎
68号(36%)B+ 吉川昭のきめ細かい整備で蘇生。出足良好の動き!
58号(39%)B+ 行き足・伸びと直線系仕上がる傾向で本体素性良し
66号(34%)B+ 中間整備で足上昇中シリーズ回りなら出足が活きる
11号(38%)B+ 近況は出足・回り足系統が仕上がる印象で中堅上位。
19号(43%)B+ 出足からスリット付近の行き足は中堅以上!
54号(39%)B+ 初卸しから常に中堅上位クラス。出足が仕上がれば。
39号(45%)B+ どちらかと言うと出足が仕上がる印象。スロー向き
69号(33%)B+ 直線系統が良く、近況は伸び足も上々の動き。
59号(44%)B+ 乗り手に恵まれた印象も出足の軽快さは目を見張る
14号機 井口佳典
出足と行き足は毎度節イチ級に 10月の周年では篠崎仁志(A1/福岡)が2号艇で優出。出足と行き足が力強く、立ち上がりからの加速感は他の追随を許さない。道中の競り合いにも強いのは言わずもがなだ。周年後はベテランの金澤一洋(B1/群馬)と高塚清一(B1/静岡)が乗ったが、両者共に絶賛。毎レース展示から気配は光っていた。伸びに関しては中堅上位止まりだが、そこも早々に負けることはない。1マークは足のタイプ的に差しやまくり差しが理想。その戦法を得意とする選手が引けば、楽しみは多い。
25号機 山口剛
仕上がった時の伸びがすごい! とにかく伸びる。この一言に尽きるモーターだ。全速通過したスリットからの出方はもちろんだが、バック最内に陣取った時にもその威力を発揮する。中堅クラスのモーター相手なら、1マークを回った後、2艇身ほど前にいても2マークまでに捕まえてしまうだろう。出足・回り足も中堅以上はあるので、気象条件にさえ合わせられれば問題なく動くはずだ。スタート巧者が引き当てて、ビシバシ0台を決めてくれば、間違いなく他艇の脅威となる。
56号機 菊地孝平
元祖エース機だが近況の動きは不明 10月の周年まではエース機として認知されていたが、その後の使用頻度が少なく近況の動きは不明。温水パイプ装着後のパワーがどうなっているかの見極めが必要だ。周年までの評価で言えば間違いなく全てがトップクラスに出るモーター。強いて言えば出足・行き足関係だが、合った状態なら伸びも光る。誰が乗っても出る、まさに超抜機だ。現状でもその動きをしてくれるのであれば、SGクラスの選手なら問題なく使いこなすだろう。前検気配から注目したい。
65号機 茅原悠紀
最近2カ月の総合力はトップクラス 周年までは中堅クラスの評価だったが、中間整備で気配一変。直後の平野和明(A1/愛知)も良かったが、その次に乗った豊田健士郎(A1/三重)が完璧に仕上げ切り2日目から8連勝で優勝。「グランプリはこれを引いた人が優勝しますよ」と終始笑顔だった。その後乗った松田大志郎(A1/福岡)も中盤に調整こそ外したが、最後は仕上げて5コースからまくり差しで優勝。回ってからの繋がりが力強い印象だった。調整の幅はそこまで広くないため、ペラ巧者に是非とも引いてもらいたい。
直前特別動画
直前コラム集
ボートレース平和島
特徴まとめ
全国でトップクラスに1コース1着率が低い
2~6コースの成績は上位
コース幅が狭く、インに不利な水面レイアウト
・バック側で斜行しての締め付け規制が厳しい
・差した艇が内側で伸びやすい
・水質は海水で、潮位の変化がある
・風の影響が非常に大きい
・無風でイン勝率上昇
・追い風で、1・2コースの勝率上昇
・向かい風で、4~6コースの勝率上昇
・春~夏は追い風傾向
・冬は強い向かい風傾向
ピックアップレーサー
西山貴浩
峰竜太
優勝戦の重圧をはねのけ峰が自在に栄冠掴む
優勝戦はフライングに対する罰則も厳しくなり、グランプリ出場選手はそれに打ち勝つ、強靱なメンタルを持ち合わせている。今年、優勝13回と断トツの成績を残すのが峰竜太(佐賀)だ。年間優勝回数2桁超えは2015年の笠原亮(静岡)の10回以来。今年のSGで1コース以外の優勝者は、鳴門オーシャンカップで4コース差しを決めた峰ただ一人である。さらに2020年はGⅡ以上で1コース以外から2回以上優勝と、大一番でイン以外で勝てる強さは頼もしい。6年ぶり4回目の平和島グランプリ。過去3回の優勝戦でイン逃げはない。誰よりも優勝回数を重ね、コース問わない決定力を持つ峰が、Vに最も近い。
毒島誠
近年一番SGを勝っている毒島がグランプリ初Vへ
最高峰の舞台に立つ選手18人のうち、11人が2回以上SGで優勝している。そんな真の実力者の中でも、毒島誠(群馬)は歴代12位タイのSG7Vで、2017年以降の6Vは最多記録を持つ。今年も気がつけば4年連続SG制覇に、3年連続トライアル2nd発進の活躍である。グランプリは6回出場して5回優出も、準V2回と黄金のヘルメットに縁が無い。当地はGⅠ制覇もあるが、6年前の平和島グランプリでは優出を逃している。さらに直前の平和島周年では自身5年ぶりのフライングもあった。しかしその後は、SGダービー準優勝にGⅠとSGチャレンジカップで優勝とトップギアに入っている。グランプリ初制覇へ突き進む。
松井繁
生涯獲得賞金38億円誇る王者が復権を目指す
グランプリ出場者とA1級レーサー全体の平均生涯獲得賞金の差は歴然だ。その中でも松井繁(大阪)は、歴代1位となる約38億円と異次元の数字である。だが史上最多23回目のグランプリ出場となる年末の顔が、ここ2年間はグランプリの舞台から遠ざかっていた。2014年のクラシック制覇を最後にSG優勝はなく、2017年のオールスターを最後にSG優出もない。しかしグランプリ出場を最大の目標として戦ってきた今年は、SGへフル参戦しGⅠで7優出と結果を残してきた。今回優勝することになれば、史上最年長となる50代でのグランプリ覇者となる。グランプリ3冠を含むSG12冠の王者が復活となるか。
菊地孝平
グランプリならびにグランプリシリーズ出場への壁は非常に厚い。グランプリ出場選手のうち88%がすでにグランプリ出場経験がある。対してA1級レーサー全体のグランプリ出場経験者は約20%だが、その内訳のほとんどがグランプリ出場者もしくは惜しくもグランプリ出場ならなかったシリーズ出場者である。そんな中、グランプリに初出場するのが、今年SGダービーを初制覇した深谷和博・シリーズ戦での優出経験のある西山貴浩だ。グランプリ初出場初Vの奇跡はあるか。
グランプリ常連の菊地が
優勝戦のスタートを支配する
約1600人いるボートレーサーの中で、A1級になれるのは全体の20%である。さらにグランプリに出場するとなれば約1%と極めて狭き門だ。今回のグランプリ出場者の過去10年の平均出場回数は3.61と、いかに複数回出場している選手が多いかが分かる。菊地孝平(静岡)は過去10年でグランプリ6回出場と常連で、4回ファイナルに進んでいる。その4回全てでトップスタート、ゼロ台が3回もある。グランプリ優勝戦でのフライングには大きな罰則があるため、過去10年でゼロ台スタートを放ったのは菊地のみ。大一番でスタートのカギを握ることは間違いない。
白井英治
超安定走法の白井が
師弟悲願のグランプリ制覇挑む
グランプリ出場選手の勝率1位は8.73の峰竜太(佐賀)だが、今年はSG準優フライングの罰則で一般戦回りの期間があった。その点を考慮して、2位の8.31を残した白井英治(山口)に注目したい。今年の白井は1着率40.3%、2連率65.12%、3連率79.53%。215走して5、6着が20回と大敗の少ない超堅実戦でSG2優出、GⅠで6優出とコンスタントに活躍した。平和島グランプリと言えば、6年前にトライアル2ndから3連勝で優勝戦1枠をつかむも敗退。しかし、その後も2017~20年の当地GⅠ以上は4回中3回で優出と相性抜群の水面だ。引退した師匠の今村豊に賞金王で恩返しへ、気持ちも入っている。
SGグランプリシリーズ出場選手
歴代優勝者
追記まとめ